パリで開催中の全仏オープンは8日に女子決勝を行い、第1シードのセリーナ・ウィリアムズが第2シードのマリア・シャラポワを6-4、6-4で破り、2002年以降となる自身2度目の全仏タイトルをつかみ取った。
第2セット、ゲームカウント5-4。スコアは40-15のマッチポイント。優勝に向けサービスラインに立ったセリーナは、恐ろしいまでに集中していた。品定めするように相手コートをにらみ、悠然としたモーションからトスを上げると、一気に腕を振り下ろす。激しいインパクト音が鳴り響き、次の瞬間には、ボールはセンターラインを叩いていた。シャラポワはただボールを見送ることしかできず、敗北を悟って視線を落とす。向かい風を切り裂いた打球の速度は、時速198キロを計測していた。
あまりに鮮烈で、あまりに強い女王誕生の瞬間だった。
「私には、あなた達の質問は凄く冗長に聞こえるの。他にもっと、聞くべきことはないのかしら?」集まった報道陣を前に、セリーナがそう言ったのは準決勝後の会見のことだった。静まり返る、会見室。ありがちな質問を拒絶し、雑音を排除することで、彼女は来たるシャラポワとの決戦のみに集中していた。女王と呼ばれるセリーナの、タイトルにかける並々ならぬ執念が見て取れた。
もちろん、勝利への執念ではシャラポワも負けていない。決勝戦開始直後の、サービスゲーム。いきなり0-40と追い込まれるが、そこから盛り返し、176キロのサーブを叩きこんで危機をしのいだ。「カモーン!」と叫ぶ声に、連覇への意気込みが溢れ出る。その勢いを生かし、次のゲームでシャラポワがブレークに成功。好ゲームの予感に、観客のボルテージは一気に上昇した。
その高揚したスタジアムの空気が、セリーナの闘志を刺激したろうか? 続くゲームでセリーナは、一打ごとに唸りを上げて気迫を前面に押し出す。フォアのウイナーでブレークを奪い返し、歓声を切り裂くように「カモーン!」と叫んだ。
フィジカルと精神力を兼備する第1シードと第2シードが、がっぷり四ツに組んだ力比べと根性比べ。そんな行き詰まる展開から、シャラポワが悔やむターニングポイントが訪れたのは、4-4で迎えた第9ゲームのことだ。
ネットへと猛進するセリーナの迫力に押されたように、シャラポワのショットがネットに掛かる。「決めるべきショットだった」と悔いたその一打をきっかけに、ブレークを許すシャラポワ。次のゲームでセリーナが、サーブで圧倒し第1セットを手にした。
第2セットも、スコアは第1セットと同じ。だがセリーナはピンチらしいピンチは迎えていないし、ブレークポイントすら許していない。第2ゲームをセリーナがブレークすると、実質、勝負の行方は決した。サーブ速度ボードに表示される数字は、試合が進むにつれて上がっていく。これはにはさすがのシャラポワも、「ダビド・フェレール(男子の決勝進出者)より速いサーブなんだもの。どうしろっていうのよ」と苦笑するしかなかった。
この優勝でセリーナは、全仏史上最年長の優勝者となった。だが彼女に衰えの色は全く見えず、むしろ全盛期はこれから訪れるようにすら見える。
「私はこれまで『ベストのプレーをした』と感じたことはない」
どこまでも貪欲な女王にとり、キャリア16個目グランドスラムタイトルも、通過点にしかすぎない。
※写真は、優勝トロフィーを抱えるセリーナ
Photo by Hiroshi sato
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