ロンドンで開催中のウィンブルドン選手権は26日に男女1回戦を行い、添田豪がアンドレアス・ハイダーマウラーに、7-6(6)、7-5、6-1でストレート勝ち。昨年に続き、同大会の2回戦進出を果たした。
「子供の頃から憧れていた、一番好きな大会」だと言うテニスの聖地で、添田が輝きを取り戻した。厳しい予選の3試合を勝ち上がり、自らの手でつかみ取ったメインドローの座。「ウィンブルドンとは縁がある。ラッキールーザーで2回出ているし、グランドスラム初勝利の場所でもある。大好きな大会だし、ウィンブルドンに助けてもらっている」とまで言う強い思い入れが、良いプレーを蘇らせた要因だろうか。初戦で108位の選手と対戦したドロー運も、ウィンブルドンとの“縁”ゆえだろう。
昨年のこの時期は50位代だったランキングは、現在は129位まで落ちている。今季序盤は体調不良もあり、勝利に見放される苦しい時期が続いた。だが、全仏の後にフットワークを中心に鍛えたことで、「身体がフィットし、気持ち良いテニスが出来るようになった」と言う。テニスの好調さは前向きなメンタルを生み、精神の充溢が勝利を呼び寄せた。その好循環が、得意とする芝の上で加速する。「ランキングは下がっているが、テニスの状態は去年のこの時期より上」という強い気持ちを抱いて、添田は初戦のコートに立っていた。
その自信が顕著に発揮されたのは、相手の追い上げを許して競った、重要な局面での精神力だ。第1セットは、5-4とリードしサービスゲームを迎えるが、ここでブレークバックを許しタイブレークにもつれ込む。タイブレークでも、3-0のリードから追いつかれ、先にセットポイントを握られる苦しい展開。だが、最初のセットポイントをエースで凌ぐと、その後は相手のダブルフォールトもあり逆転に成功する。互いに精神的に痺れる場面で、自分を信じきれたのは添田だった。
第2セットも、第1セットと似た展開。4-1とリードしながら終盤に追いつかれるが、再びリターンから攻勢に出て、前に出るプレーでブレークをもぎ取った。こうなれば、添田の心身は盤石だ。第3セットは序盤でリードを奪うと、そのまま最後まで走りきった。
今季の苦しい戦いの中、ついに手にした待望の勝利――さぞかし感慨深いかと思いきや、試合後の添田は冷静そのものだった。
「どこかに冷静な自分が居る。ランキングを戻したいというのもあるし、まだまだだと思っている」
その飽くなき向上心で、次は第9シードのリシャール・ガスケに挑む。
※写真は、ウィンブルドン男子シングルスで初戦突破した添田豪
Photo by Hiroshi sato