テニスの聖地有明で、日本最高峰のタイトルをかけ、選手たちが凌ぎを削る「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権 98th」(10月28日〜11月5日)。11月2日(木)は男女シングルス・ダブルスの準々決勝10試合が行われた。
伊藤あおいが2年連続ベスト4へ。西郷里奈と対戦
女子シングルスでは、第3シードの伊藤あおい(SBCメディカルグループ)が、佐藤南帆(三田興産)をフルセットで下し、昨年に続いてベスト4へ進出した。
佐藤の両サイド両手打ちのスピードショットを封じたのは、握力18kgの伊藤が繰り出す、フォアハンドのスライスだ。
序盤の長いラリーで「打ち合いには負けると思った」という伊藤が、パワーで対抗するのではなく、フォアのスライスで応戦する。つなげるためだけのものではなく、相手のボールスピードを生かしたカウンターのようなスライス、ドロップショット、時にはアプローチで前へ出てボレーで決めるなど、多様な使い方で佐藤を翻弄した。
佐藤はショットの精度が増した第2セットを獲得するも、伊藤の良い意味でのしつこさに最後は根負けをした形となった。
「正直なところを言えば決勝へ行きたいし、優勝したい思いはあるが、昨年良い試合ができなかったので、今回はいい試合をしたいという思いで戦いたい」
力だけに頼らない自然体のテニスで、初の決勝進出をかけて西郷里奈(東急スポーツシステム)と戦う。
その他、第7シードの清水映里(東通産業)は、第4シードの小堀桃子(橋本総業ホールディングス)に、第1シードの加治遥(島津製作所)は予選上がりの宮田萌芳(早稲田大学)に、第2シードの西郷里奈(東急スポーツシステム)は第10シードの倉持美穂(SBCメディカルグループ)にそれぞれストレートで勝利した。
■清水映里コメント
「ベスト8が最高でその壁を越えられるように戦った。(小堀とは)ジュニア時代からよく戦ってきたが、1度も勝ったことのなかった相手なので勝てて自信になる。以前よりも競った中でゲームを取り切る力がついてきたと思える。優勝はしたいが、現在意識していることができるよう、大会を通して成長できると思える戦いをしたい」
■加治遥コメント
「これまでの対戦スコアを見て、(宮田は)しぶとい相手だろうという予想はしていた。その中で私もしぶとく戦い、自分のペースに持って行けたと思う。似たタイプではあるけれど、フィジカル面で自信を持って臨めていることで対抗できた。構えて打てばチャンスはあると思ったので、攻めながら焦ることなく対抗できた。(清水との準決勝は)タフな試合になると思う。1球1球やるべきことをやり、ガッツもフィジカルも負けないようにしたい」
■西郷里奈コメント
「ファーストセットはお互いゲームを取り合う競ったスコアになり、正直”どうなるんだろう”という展開が続いた。1ポイントずつ集中力高くできたことがセットを取れた理由だと思う。その後もミスを恐れず戦えた。今までジュニアでも全国ベスト8以上に入ったことがなかったので(ベスト4は)素直に嬉しい。明日は淡々とできる範囲のことをしたい」
【準々決勝結果】11月2日(木)10:00〜
○[7]清水映里(東通産業)[7] 6-2,6-0 [4] ●小堀桃子(橋本総業ホールディングス)
○[3]伊藤あおい(SBCメディカルグループ) 7-5,3-6,6-2 ●[6]佐藤南帆(三田興産)
○[1]加治遥(島津製作所) 6-3,6-0 ●[Q]宮田萌芳(早稲田大学)
○[2]西郷里奈(東急スポーツシステム) 7-5, 6-2 [10] ●倉持美穂(SBCメディカルグループ)
【準決勝】11月3日(金祝)10:00〜有明コロシアム
[3]伊藤あおい(SBCメディカルグループ)vs [2]西郷里奈(東急スポーツシステム)
[1]加治遥(島津製作所)vs [7]清水映里(東通産業)
女子シングルスドロー
上杉海斗と白石光が準決勝で対戦。 白石は「ほんと、嫌ですね」
男子の準々決勝は、この日2試合のみ行われ、予選からベスト8に進出した上杉海斗(江崎グリコ)は、第11シードの川橋勇太(マイシン)と対戦。上杉はフルセットで試合を制し、ベスト4へ進出した。
2017年、18年と2年連続でベスト4へ進出した上杉の実力は健在だった。第2セットこそ「しっかり勝ちに行こうと思って少し緊張し、振れなくなった」とセットを落とすが、第3セットは「吹っ切れた」と得意のサーブ&ボレーを見せて、勝利へひた走った。
ダブルスの経験が生きているのは技術だけではない。「チャレンジャーやツアーに行き、シングルスを見ていて、勝つために何が必要なのかというイメージが高いレベルでできていると思う。以前は攻めて”入ったら勝ち、入らなかったら負け”みたいな考え方だったけど、そういうところも変わっている」とレベルの高いシングルスのプレーを目で学んできているという。
上杉が全日本タイトルを獲得していないのはシングルのみだが、「そこを意識すると悪く出るので、一つずつ頑張りたい」と謙虚な姿勢で臨む。
もう一方は、第1シードの関口周一を倒した磯村志(やすいそ庭球塾)と白石光(SBCメディカルグループ)と対戦。白石はサーブ&ボレーを見せるなど、先に前をとって展開し、試合を有利に進める。第2セットは磯村からサービスがスタートし、相手のセットポイントもあったが、ネットダッシュでそれをしのぐとタイブレークへ。「正直最後はもうがむしゃらに戦った」という気持ちの強さで試合をものにした。
白石と同じように、大学を卒業してプロになった上杉との準決勝については「嫌ですね。ほんと嫌ですね…」と前置きしつつ「とにかく上杉さん次第の試合にならないようにしたい。ワンブレークで持っていかれる可能性があるので、なんとか自分もキープをして、ついていきたい」と、サービスゲームが鍵になるという。
【男子準々決勝】
○[Q]上杉海斗(江崎グリコ) 6-2, 6-7(6), 6-3 ●[11] 川橋勇太(マイシン)
○[7]白石光(SBCメディカルグループ) 6-4,7-6(4) ●[14]磯村志(やすいそ庭球部)
【男子準々決勝】11月3日(金)
コロシアム 第3試合 NB12:30
[3]伊藤竜馬(興洋海運) vs [5]徳田廉大(イカイ)
コート3 11:00〜
[9]片山翔(伊予銀行) vs [13]住澤大輔(エキスパートパワーシズオカ)
※11月3日から入場料2000円、学生無料(チケット情報)
JTAのYouTube『JTA テニス オンライン』では毎日生視聴可能。
(有明コロシアム、コート1,コート2、コート3)
『スターテニスアカデミ/スタテニYouTube』では解説やゲストの飛び入り参加でその日のお勧めの試合を楽しめる。
11月4日(土)女子シングルス決勝 と11月5日(日)男子シングルス決勝 は NHKBS1で生放送
ダブルス
○[1]上杉海斗/松井俊英(江崎グリコ/ASIA PARTNERSHIP FUND)6-2 6-1 ●松田龍樹/白石光(ノア・インドアステージ/SBCメディカルグループ)
○[2]市川泰誠/渡邉聖太(ノア・インドアステージ/橋本総業ホールディングス)6-2 6-2 ●加藤木塁/大田空(法政大学)
○[3]今村咲/佐藤南帆(EMシステムズ/三田興産) 6-2 6-4 ●吉岡希紗/奥脇莉音(フリー/橋本総業)
○光崎楓奈/松田美咲(フリー/橋本総業)6-0 6-3 ●[2]小堀桃子/森崎可南子(橋本総業ホールディングス)
日本 テニスミュージアム
全日本選手権の大会期間中「テニスミュージアム」が有明テニスの森公園のクラブハウス2階にオープン。
100年をこえる日本のテニス史を飾った選手の写真や、ラケットなどなどを展示。
入場無料(9時から21時まで)
「テニスミュージアム」 photo 伊藤功巳
取材:保坂明美 写真:鯉沼宣之/伊藤功巳