テニスの聖地有明で、日本最高峰のタイトルをかけ、選手たちが凌ぎを削る「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権 98th」(10月28日〜11月5日)。11月5日(日)は男子シングルス決勝、男女ダブルス決勝の計3試合が行われた。
男子シングルス決勝は第5シードの徳田廉大(イカイ)が第5シードの白石光(SBCメディカルグループ)と対戦。6−2、6−2で徳田が初の天皇杯を獲得した。
初対戦となる2人だが、徳田は白石を「なんでもできるし、いやらしいテニスをしてくる」、白石は徳田を「初対戦だがタフな相手であることは間違いない」と警戒した。
立ち上がりは白石がスローボールを供給し、先に相手に打たせる作戦に出た。徳田は「打ち急いで打点が合わない」時もあったが、まずはじっくり打ち合い、ボールを見極めて打ち込んだ。
徳田が予想外だったのは、白石が「バックでの打ち合いに持ってきた」ところ。白石はバックハンドが得意だが、徳田も同じく、むしろ武器としている。白石の狙いとしてはロングラリーで徳田に先にミスをさせることだが、結果的には相手の土俵で戦うことになってしまった。
「想像以上に相手が打ってきた。ファーストサーブをリターンでぐいぐい攻めてきたし、チャンスが来た時にサービスエースやバックハンドウイナーがきて、フラストレーションになった」と白石は語る。
徳田はクロスラリーで少しでも隙があると得意のストレートに展開し、苦しい場面もサービスエースで切り抜ける。終始優位に試合を運び、優勝へと駆け抜けた。
昨年2月、左膝を故障し、休養を経て9月に復帰するも、海外へ出て2週間戦うと痛みが出て帰国を余儀なくされた。今後のテニス人生をどうしようかと悩む中、家族が「どんな形であれ、やるなら全力で応援する」と言ってくれたことが支えになった。この3か月で新しい治療を試み、目指して手にしたタイトルに、徳田は「ほっとした。これからは全日本のことを頭から排除できる」と正直な思いを吐露する。
「全日本で5試合戦い抜くというのは、想像以上に疲れる。でもそのその過酷な大会で、勝てば何かを掴める、何かきっかけになるだろうと思った。ほっとしたという思いと、自分の目指すところはここ(グランドスラム出場)しかないというのができたので、今日だけは余韻に浸って、明日から迷いなくその目標に向かって進みたい」
全日本に出場しなくても海外ツアーは回れる。しかしこのタイトルを獲得するまでに費やしたエネルギーと時間、そして思いこそが、徳田の大きな財産となるだろう。
【11月5日(日)の試合結果】 有明コロシアム
【男子シングルス決勝】
○[5]徳田廉大(イカイ) 6-2,6-2 ●[7]白石光(SBCメディカルグループ)
【女子ダブルス決勝】
○[1]伊藤あおい/瀬間詠里花(SBCメディカルグループ/橋本総業)6-3,7-6(4) ●光崎楓奈/松田美咲(フリー/橋本総業)
【男子ダブルス決勝】
○[2]市川泰誠/渡邉聖太(ノア・インドアステージ/橋本総業ホールディングス)6-3,6-2 ●[4]田口涼太郎/羽澤慎治(Team REC/JCRファーマ)
日本 テニスミュージアム
全日本選手権の大会期間中「テニスミュージアム」が有明テニスの森公園のクラブハウス2階にオープン。
100年をこえる日本のテニス史を飾った選手の写真や、ラケットなどなどを展示。
入場無料(9時から21時まで)
「テニスミュージアム」 photo 伊藤功巳
取材:保坂明美 写真:鯉沼宣之/伊藤功巳