テニスの聖地有明で、日本最高峰のタイトルをかけ、選手たちが凌ぎを削る「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権 98th」(10月28日〜11月5日)。11月5日(日)は男子シングルス決勝、男女ダブルス決勝の計3試合が行われた。

女子ダブルスは第1シードの伊藤あおい/瀬間詠里花(SBCメディカルグループ/橋本総業)が、6−3、7−6(4)で 光崎楓奈/松田美咲(フリー/橋本総業)を倒し、初優勝に輝いた。

瀬間も伊藤も女子ダブルスのタイトルは初。写真/鯉沼宣之

ロブから足音も立てずにネットへつく伊藤、強打でストレートを打ち抜き気合を見せる瀬間、2人のダブルスは静と動、クールとガッツというような、不思議なケミストリーを醸し出した。

「落ち込んだ時や大事な時に瀬間さんの声や気合が励みになる。私が持っていないものをたくさん持っていて補っていただけいる」と伊藤が言えば、「あおいちゃんはいつも冷静で、私がヒートアップしてしまうところを的確なアドバイスをもらえる。迷ったときに判断してくれて、10代だけど10代じゃないみたい」と信頼を置く。

今年が19回目の全日本出場となる34歳の瀬間詠里花は、混合ダブルスの優勝はあったが、女子ダブルスのタイトルはなかった。

「(陣営の)みんなの顔を見て頑張れた。全日本は日本で一番大きな大会ですごく重圧もかかる。今年は本当に頑張ってきたので……今は頑張ったら本当にいいことがあるんだなと思う」と涙を見せた。

また、瀬間は「全日本は重みのある大会。ここにかける選手はITFで優勝する以上のものを得られると思う。メディアにも取り上げられるし、歴史に名前を刻める」とその価値を語り、19歳の伊藤も「他の大会より緊張するけど、ジュニアも含めて日本一というのは大きいと思う。やっぱりグランドスラムに出ないとテニス選手としてなかなか知られないけれど、全日本を取ったというところでステータスを得られる」と続いた。

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男子ダブルスは、第2シードの市川泰誠/渡邉聖太(ノア・インドアステージ/橋本総業ホールディングス)が、6−3、6−2で第4シードの田口涼太郎/羽澤慎治(Team REC/JCRファーマ)を破り、初の決勝進出で優勝を成し遂げた。

フューチャーズレベルのダブルスで多く優勝経験のある渡邉/市川が優勝。 写真/鯉沼宣之

ジュニア時代にも組んでいた市川と渡邉は、互いに息の合ったプレーを見せた。最近はお互いシングルスを優先しており、常に組んではいないが、ITF優勝の実績もある。

また、先のATP500大会、ジャパンオープンでは、2人とも違うパートナーでダブルスの本戦を戦った。

「マクラクラン勉選手と一緒に練習して、考え方から、技術まで全てが一新された。そこから2週間くらい、こういうダブルスがしたいというのが明確になった」と渡邉が言えば、市川も「フリッツやシュワルツマンの試合を見て、ボールの威力の違いや、自分に足りないものがわかった」と試合だけではない収穫を感じていた。

初の全日本タイトルには「やっと終わったなと思った」(渡邉)「うれしいというのもありますが疲れた」(市川)と安堵の表情を見せる。

ATPツアー初出場を良き経験に、失セットゼロで果たした優勝への道は、もう一つの良き経験として彼らの糧となっていくだろう。

【11月5日(日)の試合結果】 有明コロシアム
【男子シングルス決勝】
○[5]徳田廉大(イカイ) 6-2,6-2 ●[7]白石光(SBCメディカルグループ)
【女子ダブルス決勝】
○[1]伊藤あおい/瀬間詠里花(SBCメディカルグループ/橋本総業)6-3,7-6(4) ●光崎楓奈/松田美咲(フリー/橋本総業)
【男子ダブルス決勝】
○[2]市川泰誠/渡邉聖太(ノア・インドアステージ/橋本総業ホールディングス)6-3,6-2 ●[4]田口涼太郎/羽澤慎治(Team REC/JCRファーマ)

男子ダブルスドロー
女子ダブルスドロー

日本 テニスミュージアム

全日本選手権の大会期間中「テニスミュージアム」が有明テニスの森公園のクラブハウス2階にオープン。
100年をこえる日本のテニス史を飾った選手の写真や、ラケットなどなどを展示。
入場無料(9時から21時まで)

「テニスミュージアム」 photo 伊藤功巳

取材:保坂明美  写真:鯉沼宣之/伊藤功巳