ATP500「木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス」が、有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コートにて9月25日~10月1日(本戦)に開催されている。29日には車いすテニスのシングルスとダブルスの決勝が行われ、シングルスではパリ・パラリンピックで金メダルを獲得した小田凱人が2連覇を達成した。
車いすテニスのシングルス決勝は有明コロシアム1試合目で11時からのスタート。18歳で金メダルを取り、世界1位に駆け上がった小田のプレーを見たい人が多く訪れた。
対戦相手は世界4位で第2シードのG・フェルナンデス。両者ともにボールに入るタイミングが合った時には角度の付いたパワフルなショットを決めていく。小田は時速150キロを超えるサービスを放ち、左利きならではの角度の付いたサービスも有効に使ってサービスゲームをキープ。4-3のゲームではリターンが冴えてブレークに成功し、6-3で第1セットを奪取した。
第2セットでも小田が先にブレークしてリードしていく。試合を通して特に会場が盛り上がったのは、小田がネットプレーでポイントを取った時。「あまりやっている人はいないし、これから自分の武器になっていく」と言う威力のあるドライブボレーでかっこよく決めるのだ。
「前に行って返球されたら、そこからポイントを取るのは難しい」と言うとおり、車いすテニスでは、1球目のボレーで決められないと劣勢になるためネットに出るには勇気がいる。だからこそ小田は「車いすの低い位置から決めるにはスピンが有効だと思っています」とスライスボレーではなく、威力のあるドライブボレーで決めることを選んだ。勇気のある派手なプレーに観客が沸き一体感が生まれていく。
威力だけでなくバリエーションに富んだプレーを披露した小田が、第2セットを6-4で取り、大勢のファンの前で堂々の優勝を果たした。
チャンピオンスピーチでは、「僕が見たい景色を今日見られました。お客さんがめっちゃ入った中でプレーしたいと思っていて、今日実現できてうれしく思っています」と、優勝という結果以上に、車いすテニスを見に多くの観客が来てくれた中でプレーできたということに満たされたものがあったようだ。
「ここまでが第一章」と決めていた小田。4年前、初めて出場した時は観客席にいても声もかけてもらえなかった。しかし今はカートに乗っていても声をかけてもらえる。「4年でここまでこれたのかと、エモーショナルでした。(第一章は)想像していたより色々なことができたと思う」と充実の4年間を振り返った。
これからは第二章だ。「やることは変わらないけど再スタート。ちょっと新しいことをやりたいと思っています」。まだ18歳。可能性は無限に広がっている。これからの小田凱人に注目しよう。
-9月29日(日)車いす決勝の結果-
■シングルス結果■
〇小田凱人(東海理化)[1] 6-3 6-4 ●G・フェルナンデス(アルゼンチン)[2]
■ダブルス結果■
〇藤本佳伸/M・ユースフ(GA Technologies/マレーシア)[2] 6-4 6-7(4) 10-7 ●荒井大輔/齋田悟司(BNPパリバ/シグマクシス)[1]
構成:Tennis.jp 写真:伊藤功巳