日本最高峰のタイトルをかけ、選手たちが凌ぎを削る「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権 99th」(本戦10月4日〜13日)。10月12日は男子シングルス準決勝、男子ダブルス決勝の計3試合が行われた。

決勝は第1シードの柚木武/渡邉聖太組と、ノーシードながらも実力は高い上杉海斗/野口政勝組の対戦となり、6-4 6-7(8) [10-3]で柚木/渡邉が優勝を飾った。柚木は初優勝、渡邉は昨年に続き2連覇となる。

今年3月から組み始め、チャレンジャーでも優勝1回、準優勝1回という実績を挙げている2人は、196cmの身長から繰り出す柚木のビッグサービスと、オールラウンドでコートカバーリング能力の高い渡邉のコンビネーションが持ち味だ。決勝でもそれは存分に発揮され、巧者の上杉/野口と渡り合い、レベルの高いダブルスを見せる。

渡邉のストローク力もペアの武器の一つ 写真:伊藤功巳

第1セットを6-4で取り、第2セットも4−1と柚木/渡邉がリードするが、会場の応援を味方につけた上杉/野口が反撃し、タイブレークでこのセットを落とす。

急造ペアながらも、ダブルス巧者の持ち味を発揮した上杉/野口 写真:伊藤功巳

しかし「半年ずっと、それこそ10ポイントは数十回とやってきているので、そこに対しての焦りは一切なかった」(渡邉)「緊張もなく思い切りできた」(柚木)という2人が噛み合い、10ポイントタイブレークは5-3から5ポイント連取で勝ち切った。

「実は1ヶ月前、年下のくせに僕がケンカをふっかけて…」渡邉の優勝スピーチでの予期せぬ告白に真意を探ったところ、「ケンカというよりもお互い思っていることを言い合ったという感じ」という。

高崎のITFM25「SBCドリームテニス国際大会」にて第1シードだった2人は2回戦で敗退を喫する。その後、渡邉は「その時の(柚木の)行動にプロフェッショナルさを感じなかったので、その時僕が思っていることを打ち明けました。結果は仕方ないのですが、それまでのプロセスをもっとやってほしいと…」柚木に伝えた。

その時は言い合いだったかもしれないが、「その後のプレーにも練習にもつながったし、言ってもらえたのは本当に感謝しかないです」と、渡邉の勇気ある行動に、柚木は変化で答えた。

抱き合って喜ぶ柚木/渡邉 写真:伊藤功巳

「今回は試合の前夜にお互い対戦相手の動画を見ておき、試合当日にはそれに対する意見交換、そして試合前の練習では、30分のアップとかではなく、今日も1時間15分練習しました。そういうことを徹底してやれたということは、チーム的には良い方向を見つけられたんじゃないかと思います」(渡邉)

生じた不協和音をそのままにせず、お互いの思いをぶつけ合って臨んだ全日本。優勝という結果を経て、今年後半、日本のチャレンジャー4大会に臨む。

【三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権 99th 10月12日の結果】

■男子ダブルス決勝

左から準優勝の上杉海斗/野口政勝、優勝の渡邉聖太/柚木武 写真:伊藤功巳


柚木武/渡邉聖太(イカイ/橋本総業ホールディングス)[1] 6-4 6-7(8) [10-3] 上杉海斗/野口政勝(江崎グリコ/ONE DROP)

記事/Tennis,jp 写真/伊藤功巳