三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権 99th」(本戦10月4日〜13日)の最終日、男子シングルスの表彰式後、今大会で引退した伊藤竜馬の引退セレモニーが開催された。

セレモニーには花束贈呈に錦織圭が来場、杉田祐一さん、添田豪さんの他、現役選手の綿貫陽介、島袋将、望月慎太郎、そして観客席にも多くの選手、家族、友人らが最後の姿を見守った。

錦織圭が花束を贈呈 写真:伊藤功巳

錦織は「僕のなかでは伊藤くん、ここにいる杉田選手、あとは添田くん。やっぱりこの3人が同世代として一緒に戦ってきた仲だったので、最後の1人も辞めるかというとちょっと悲しい思いはあるのですが、デビスカップやオリンピックをともに戦えたことは誇りに思っています。今回の全日本でも、力のある、最後まで諦めない戦いをしてくれたと思います。本当にお疲れ様でした」とスピーチした。

さらに、「12歳の頃からずっと一緒にやってきて、同い年でプロに転向した」という杉田さんは「竜馬がランキングをあげたときは凄い悔しい思いもしました。自分を苦しめて、それは竜馬も同じ気持ちにだったと思います。これからの人生が長いので、また一緒にテニス界を盛り上げていきましょう」と今後の活動にエールを送った。

そして添田デ杯監督は、「僕が22で竜馬が18のときからナショナルトレーニングセンターで一緒に練習して切磋琢磨しました。ライバルだったし友だちだったし、すごく色んな感情があります。トップ100に入って、オリンピックも、グランドスラムも一緒に戦えたのは僕らの大きな思い出として、そして次の世代に繋ぐ財産として誇れるものだと思います。竜馬らしさを出して後輩たちにテニスの良さというか、強さを伝えていってほしいと思います」と話し、今後添田監督にとっても大きな支えとなっていくことを感じさせた。

最後の試合の後は丁寧にサインに応じた 写真:伊藤功巳

最後に伊藤は「ファンの皆さんの前でたくさんの試合ができました。日本の大会だけでなくグランドスラムの試合にも応援に来て頂き、やっぱりテニスは1人ではできず、戦うことができないと気づきました。皆さんの応があり、この最後の大会でもいい終わり方ができました。改めて、ファンの存在の大きさを感じた一週間になりました」と感謝を述べる。

また、「みかちゃん、ずっと僕のそばでサポートしてくれて、一緒に戦ってくれて、たくさんのことを乗り越えてくれてありがとう、一緒にオリンピックやグランドスラムも行けたね。どんなときでも大丈夫、竜馬ならいけると前向きに言ってくれました。いつも支えてもらったので、これからは僕が少しでも支えられるように頑張っていきます」と涙で妻への感謝を述べた。

引退後、すでに選手からコーチとしての帯同を望まれており、本人も「元気なうちはツアーコーチとして選手をサポートしたい」という。

3年間帯同したトレーナー、現役選手、元選手も引退セレモニーを見守った 

記者会見での「伊藤竜馬とはどういう選手だったのか」という質問には「20代は粗削りで、勢いもありつつ、乱暴な部分もあったけど、20後半から30代になって、ベテランの味をゲットでき、より落ち着きも冷静さも得られた。今のメンタル状態が20代の時にあれば、もっと行けたんじゃないかというのもあります。テニスや試合への取り組み方は、非常に高かったかなと思います。あとはやっぱり、攻撃的なフォアハンドが自分の中で一番の魅力だった。そこを、今大会でも見せられたのは、非常に大きかったなと思います」と答えた。

テニスに対しては真摯に取り組み、コートを離れるとユーモアもある温厚な人柄は、選手仲間からもファンが多かった。「これからもテニスが大好きです」という思いとともに、伊藤の息吹を若手選手に吹き込んでいく。

記事/Tennis,jp 写真/伊藤功巳