『2025 ビリー・ジーン・ キング・カップ(BJK杯) by Gainbridge ファイナル予選グループA』が4月11日(金)から13日(日)まで有明コロシアム(東京江東区)で開催された。

3カ国6つのグループに分かれ総当たり戦を行い、1位の国が9月16日から21日に中国の深圳(せん)で行われるファイナルに進出する。

13日、グループAの日本は、お互いルーマニアに勝利し1勝0敗で並ぶカナダと戦い、2-1で勝利、昨年に続きファイナル進出を決めた。

2時間45分の大接戦を演じた柴原瑛菜、18歳エムボコに惜敗

「彼女の底抜けに明るいキャラクターがチームの太陽のようにいつも光を与えてくれる」と、杉山愛監督が信頼を寄せる柴原瑛菜(橋本総業ホールディングス/136位)が、前日に引き続き、シングルス2で起用された。

対戦相手は18歳のビクトリア・エムボコ(159位)。今年すでにITF5勝しており、まだ2敗しかしていない。第1セットはサービスとストロークの強打の応酬となり、柴原が4-6で落とす。最初のゲームで不用意なミスが出て40-15からエムボコにブレークを許したことが、このセットの分け目となったが、内容はほぼ互角だった。

ビクトリア・エムボコ 写真:鯉沼宣之

第2セットもその流れが続く中、柴原はエムボコとの戦い方を見出していた。

「最初は先に角度をつけて相手の好きなプレーをさせてしまっていた。セカンドセットからはもっと自分からいいボールを打とうということを考え、まずはビッグターゲット(コートの真ん中)へ打ってから、いいボールが来たら広く打とうとした」

柴原は第2セットで3本のマッチポイントを凌ぎ、ファイナルセットへ持ち込むと、「セットを失ったことにがっかりし、それを引きずってしまった」というエムボコの第1ゲームをブレークし、流れを完全に引き寄せたかに見えた。

しかし、4-3の第8ゲーム、そこで「相手のボールが来なくなったところで、うまく足から行けなくて、それまでいいタイミングで取れていた部分ができなくなった」という柴原がミスでブレークを許す。4−5なったサービスゲームではエムボコのマッチポイントを3本凌ぐも、5−6となった7本目の相手のマッチポイントでリターンエースを決められ、万事休した。

柴原瑛菜 写真:鯉沼宣之

2時間45分のタフマッチを終えた柴原だが、「強気で打っていってそれが入ってくれたし、スイングをしていけばいいことがある。マッチポイントでも最後の最後までファイトができた」できる全てのことを出し尽くした達成感に、表情は明るかった。

51位の実力を見せつけた内島の堂々たる勝利で1-1のタイへ持ち込む

シングルス1の内島萌夏(安藤証券/51位)は、カナダのエース、マリーナ・スタキュジッチ(126位)を 6-3 6-3、わずか1時間15分で破り、51位の実力をしっかりと見せつけた。

前日、ルーマニアのアンカ・トド二を相手に、マッチポイントを握られてから逆転するという、2時間30分のロングマッチを演じた内島は、「昨日、苦しい試合を勝ち切れたので、気持ち的にも最初から思いきりいけた」と、立ち上がりから躍動感あふれるフォアハンドで攻撃する。さらにはスライスやドロップショットを織り交ぜ、「単調にならないように」して、スタキュジッチの反撃を封じた。

マリーナ・スタキュジッチ 写真:鯉沼宣之

「団体戦は正直得意としていなかった」という内島だが、実力を存分に表現できたことのうれしさが、言葉にも現れる。

「毎回監督に使っていただいていたのに結果で恩返しすることができいなかった。杉山監督も選手時代たくさんの経験をされていて、色々助言をいただいたり、奈良コーチ、土居コーチからもアドバイスをいただいた。おかげで今日は本当に伸び伸びできたし、ほっとしている」

エースとしての苦悩を経て、チームにもたらした2勝には、それ以上の価値がある。「また9月呼んでいただけたら、もうちょっと成長した姿を見せられるかな、と思っています」

内島萌夏 写真:鯉沼宣之

日本が誇る世界のダブルス青山修子/柴原瑛菜が決めた!

1-1となった日本は、青山修子(フリー/ダブルス53位)/穂積絵莉(日本住宅ローン/47位)のダブルスを、長年ペアを組み、全豪オープン準優勝、元世界4位という実績持つ青山/柴原に変更した。

杉山監督は「オーダーどおりでいく可能性ももちろんあったし、私は体力的に大丈夫かな?と思い、(柴原に)聞いたところ『やります!』と言ってくれた。シングルスで自信溢れたプレーができて、この負けはコートで返すという気持ちだったと思うので、100%信頼してこのペアでいった」と、その理由を明かす。

パリ五輪以来のペアリングとなる2人だが、コートに入れば、そのコンビネーションは健在で、第1セットを6-3で先取する。第2セットこそレベッカ・マリーノ(ダブルス219位)/ケーラ・クロス(ダブルス178位)の突き球やストレートに足を止められ5-7で落とすが、ファイナルセットは相手を掌握、青山のストロークに柴原がネットで呼応し6-2で日本チームの勝利を決めた。

「みんなでチームとして勝ちにいくぞ、という気持ちを持って戦えた。最後までいいエネルギーを持って楽しんで取り組むことができたので、それが結果に繋がった。ファイナルに進出でき、とてもうれしい」(青山)

「久しぶりに青さん(青山)とダブルスして、本当に楽しかった。シングルスで負けていたので、リベンジという気持ちでダブルスに入った。第2セットは私のプレーの質が落ちたが、3セット目は切り替えていけた」(柴原)

穂積絵莉も勝利を喜ぶ(中央) 写真:鯉沼宣之

内島が苦しんできたように、普段は個人で戦う選手たちが、団体戦で力を発揮するのは容易ではない。自らもそうであったという杉山監督は、「自分自身の経験があるからこそ、どういうふうにしたらリラックスできるのか、力を出し切れるのか、選手目線になりながら、空気を感じながら声かけをしている」という。

柴原も「愛さんは本当にポジティブなエネルギーを持つので、試合にいい雰囲気で入っていける。たくさん助けられている」と信頼する。

杉山愛監督 写真:鯉沼宣之

監督の掲げる目標は「やるなら世界一、できるでしょ」。試合終了後には全員で抱き合い、喜びを分かち合ったチームジャパンは、9月のファイナルでどのような戦いを見せてくれるのだろうか?

構成:保坂明美 写真:鯉沼宣之