ATP500「木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス」が、有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コートにて9月24日~9月30日(本戦)に開催されている。2日目となる25日はシングルスとダブルスの1回戦が行われた。

シングルスではワイルドカードの西岡良仁(ミキハウス)と望月慎太郎(木下グループ)、予選を勝ち上がった島袋将(有沢製作所)の日本人3選手に加え、全米オープンに優勝し世界1位に返り咲いたC・アルカラス(スペイン)が登場した。

金星を挙げた島袋将。写真:伊藤功巳

予選を突破した世界ランク273位の島袋が第5シードで22位のT・マハツ(チェコ)にストレート勝利する金星を挙げた。マハツは今年2月のアカプルコでツアー初優勝を果たした24歳。対する島袋は2023年のジャパンオープン以来のツアー本戦だった。

第1セットはキープが続いたが、4-3のゲームで島袋が初ブレーク。「セカンドサービスになったら強く打つことを心掛けました。ここから相手のサービスゲームでプレッシャーをかけられました」と、リターンゲームでの手ごたえをつかみ6-3で第1セットを取る。

第2セットは相手にリードされるもののサービスを軸に挽回していく。島袋はサービスが好調で、速度に加えて、相手をコートの外に追い出すコースや、高い打点で取らせる回転系サービスも有効だった。今年の4月から岩渕聡氏に師事している効果のようで、「サービスは武器になるけれど崩れやすかった。サービスが良くなり、3球目以降の組み立てもレベルが上がったと思う」と自信を見せる。

言葉の通り、第2セットのタイブレークではサービスで崩して3本目でポイントが取れる場面が多く、1本目のマッチポイントで勝利を手に入れた。「初めてジャパンオープン本戦1回戦を突破できました。20位台という戦ったことさえないランキングの相手にストレートで勝ててうれしい」と喜んだ。「今は怖いものなし」「120点でした」と自信満々のコメントが溢れ、調子は最高。次はS・コルダ(アメリカ)と対戦する。

良いプレーはできているが勝ちに結びつかなかった西岡良仁。写真:伊藤功巳

西岡の相手は23歳のL・ダルデリ(イタリア)。今季3大会で優勝し、キャリアハイとなる30位をマークした勢いに乗っている選手だ。先にブレークしたのは西岡で、ロングラリーに持ち込むとループをミックスしたうまい配球でポイントが取れていた。西岡にとって「想定通り」の形だったが、タイブレークでは相手のサービスの威力が増して第1セットを失う。

第2セットではお互いにけいれんして、動きがぎこちない状態に。そんな中、西岡は我慢して相手を前後に揺さぶろうとするも崩しきれず、対するダルデリはサービスもフォアも振り切ってエースを狙ってきた。「(相手も)けいれんしているのに、あんなにエースを取られたのは初めてでした」と、西岡も認めるしかないダルデリの気合のプレーの前に初戦敗退が決まった。

西岡にとっては、良いテニスができているのに「ほしいポイントの1点が遠い」という状況が続いている。現在の男子テニスのパワーと高速化の中で、小柄な西岡は戦術を駆使して戦っているが、「最終的に押し切られることになっている」。今後は「速いサーフェスを選んで出場していく」ことも考えていると言う。光明を見出せることを祈る。

第2セット1ゲーム目までは試合をコントロールできていた望月慎太郎。写真:伊藤功巳

望月は第4シードで12位のC・ルード(ノルウェー)と対戦。第1セットはサービス、ボレー、ドロップショットが効果的に決まり、ラリーでも先に展開して望月らしいプレーでポイントを重ねて6-4で取る。

第2セットの1ゲーム目も理想的なプレーで4ポイント連取してブレークに成功。しかし、「そのまま行きたい気持ちが強くなって、取れないことでフラストレーションが溜まった」と、2ゲーム目からミスを連発してしまう。その後も立て直すことができず、6-4、1-6、1-6で敗れた。

「自分に少しプレッシャーをかけすぎたと思う。良いプレーもたくさんあったと思うけれど、勝つにはもう少し必要なことがあると思うので、そこは今後突き詰めていきたいと思います」と、第1セットで良いプレーができていただけに悔しがった。

世界1位のアルカラスが有明を沸かせた。写真:伊藤功巳

センターコートのナイトセッション2試合目にC・アルカラス(スペイン)が登場。世界1位のプレーを生で見たいとスタジアムは観客で埋め尽くされた。しかし、2-2となった5ゲーム目でアルカラスが転倒し、なかなか立ち上がれない事態に。メディカルタイムアウトを取り、足首にテーピングしてコートに立ったが精彩を欠いていた。

第1セット5-4で雨が降り出し屋根を締めるために試合が中断。戻って来てからは、迫力のあるプレーを随所に見せて6-4、6-2で勝利した。「第1セットの5ゲーム目で問題があったけれど、それを乗り越えて良いテニスができて良かった」とアルカラス。転倒した時は心配されたが、最後までプレーできる状態であったことがなによりだった。

【9月25日水曜日の結果】
■シングルス1回戦■
〇島袋将(有沢製作所)[Q] 6-3 7-6(4) ●T・マハツ(チェコ)[5]
〇L・ダルデリ(イタリア)7-6(9) 6-3 ●西岡良仁(ミキハウス)[WC]
○C・ルード(ノルウェー)[4] 4-6 6-1 6-1 ●望月慎太郎(木下グループ)[WC]
○C・アルカラス(スペイン)[1] 6-4 6-2 ●S・バエス(アルゼンチン)
〇T・フリッツ(アメリカ)[2] 4-6 6-3 7-6(3) ●G・ディアロ(カナダ)
〇J・ブルックスビー(アメリカ)[PR] 7-6(4) 6-3 ●U・アンベール(フランス)[6]
○B・ナカシマ(アメリカ)6-7(6) 7-6(4) 6-2 ●J・トンプソン(オーストラリア)
○H・ルネ(デンマーク)[3] 7-6(7) 6-1 ●H・メジェドビッチ(セルビア)
〇S・コルダ(アメリカ) 4-6 6-3 7-6(4) ●M・ギロン(アメリカ) 
○A・ブキッチ(オーストラリア)[Q] 6-4 3-6 6-3 ●D・ジュムフル(ボスニアヘルツェゴビナ)
○E・クイン(アメリカ)[Q] 7-5 6-2 ●A・ミケルセン(アメリカ) 
○Z・ベルヒス(ベルギー)1-6 7-6(2) 7-6(4) ●A・タビロ(チリ)

1回戦に勝利した上杉海斗/渡邉聖太組。写真:伊藤功巳

■ダブルス本戦1回戦■
○上杉海斗/渡邉聖太(江崎グリコ/ネッツトヨタ神戸)[WC] 6-4 6-2 ●A・クライチェク/N・メクティッチ(アメリカ/クロアチア)
○C・ハリソン/E・キング(アメリカ)[1] 7-6(5) 6-4 ●F・ロンボリ/J・ジエリンスキ(ブラジル/ポーランド)[Q]

取材・文:赤松恵珠子、写真:伊藤功巳