錦織圭、今年は全米オープン決勝進出を果たすなどの成績を残し、世界ランクは5位、来年はグランドスラム大会優勝を目指す活躍を遂げている。
「圭のテニスの特徴に、ミスが少ないというところがあります。これは子供の頃から同じで、ミスが少ないということは、世界のトップ・プレイヤーを目指すにはとても重要なことで、特にビックサーブなどビックとつくような武器を持てない日本人にとって、絶対条件のひとつと言っても良いでしょう。」
「盛田ファンド」のマネージャーとして米国留学ジュニア時代を担当し、現在は彼に続く世界大会で活躍するジュニア選手を育てている米沢徹コーチのインタビュー。
彼のミスの少なさは、常にコート狭しと走り回ることのできるフットワークと、決してあきらめないボールへの執着心、たとえ0-40との状況からの最後のワンポイントであっても大切にプレイできる心からくるものだとおもいます。
圭は、自分の持ち物にとても愛着を持ち、つねに大切にしています。それは高価なものでなくても、彼は可能な限り大切に使い続けるのです。お金などの使い方を見ても同じです。海外で生活していますので、遠征などの食事の時、それぞれの選手が自分で食事を注文することなどがよくあります。
ほとんどの選手が何も考えずに注文します。ところが、圭の様子を見ていると、一人だけメニューとにらめっこをし、今後の日程や所持金、そして自分の本当に食べたいものから、一生懸命に計画を立て、先を見越して注文をしているのです。
このすべてに愛着をもち、たとえ壊れかけたものでも大切にしたり、先を見越して計画を立てることは、圭のテニスのプレイスタイルにそっくりだと感じています。
また圭の場合、小さな体、少ないスタミナ、追い込みすぎると壊れてしまう肉体と言うことを自分で知っているからか、常に70~80%程度の筋力を使い練習を行うということを実践していました。もともと筋力を100%使おうとすると、それがリキミとなり、正確性や上達の妨げとなることもあります。
それを当時まだ13歳程度の圭が知っていたかどうかは分かりませんが、彼は70~80%の筋力しか使っていませんでしたが、頭と感覚を120%使って、最も効率的なストロークやボールを捉えるタイミング、効果的な戦術などを考えながら練習メニューをこなしていたのです。
もちろん、試合となると当然100%の力で望むわけですが、普段70~80%の力で考えながら練習している圭は、100%の筋力を発揮してもリキミにはならず、ものの見事に練習の成果を出していました。70~80%のパワーでできない技術が、100%のパワーで使える分けはありませんから、圭はすでに一流プレイヤーであったということでしょう。
記事:長嶋秀和
情報提供:米沢徹