全豪オープン3日目の男子シングルスは2回戦。選手には初戦を勝って初めて「大会に参加している」という意識が芽生えるというが、上位勢もやはり同じようで、調子を上げてきたようだ。
シード順で結果をまとめよう。第2シードのラファエル・ナダル(25歳、スペイン)は、かつての世界ナンバー2のベテラントミー・ハース(33歳、ドイツ)を相手に力強いテニスを見せて6-4、6-3、6-4のストレート勝ちを収めた。相手は故障からの復帰途上の選手とはいえ、2回戦から百戦錬磨のハースというのはナダルにとっては試練だったが、逆にここをきちんと勝てたことは3回戦以降にいい影響となるはずだ。「1週目の試合というのは、本当に難しいんだ。みんなにはわかってもらえないだろうけどね」とナダルは言葉にする。勝ち進んで当然と周囲も、また恐らく本人もそう考えている中で、平常心を保ちつつ、かつアグレッシブに戦うのは、ナダルといえども難しいのだろう。
その意味では第3シードのロジャー・フェデラー(30歳、スイス)が、相手のアンドレアス・ベック(25歳、ドイツ)の練習中の故障による不戦勝での勝ち抜けだったのは、普通なら良し悪しでもあると考える。試合による消耗は確かに避けられても、大会が始まったばかりの段階で日程のリズムが崩れ、また、実戦での感覚の調整もできない。フェデラーのように優勝しか目的がなく、2週間を戦い抜くのを当然と考えている選手にとっての不戦勝は、必ずしもラッキーな要素ではない。
しかし、フェデラーはこうした要素も、全てプラスに変えられるだけの経験と実績を持っている。この一日の余裕が彼にどんな影響を与えるのか、次戦に注目したい。
第7シードのトマーシュ・ベルディハ(26歳、チェコ)、第11シードのフアンマルティン・デルポトロ(23歳、アルゼンチン)などが強さを見せて勝ち上がっていく中で、コートに沈んだのが第8シードのマーディ・フィッシュ(30歳、米国)だった。フィッシュはコロンビアのアレハンドロ・ファリャ(28歳、コロンビア)との対戦だったが、7-6(4)、6-3、7-6(6)のストレートでファジャが勝ち、全豪を終えた。フィッシュの調子そのものは悪くはなかったようなのだが、相手のファリャの痙攣に、逆にペースをかき乱されて平常心を失い、58本ものエラーを重ねたのが敗因だった。
注目の若手は明暗が別れた。第10シードとはいえ、ハードコートでの強さはランキングよりやや落ちるニコラス・アルマグロ(26歳、スペイン)と対戦したグリゴール・ディミトロフ(20歳、ブルガリア)は、先に2-1とリードを奪っておきながら、第3セットのタイブレークを取った時点で力尽きた(6-4、3-6、7-6(4)、4-6、0-6)。
一方で、地元期待のバーナード・トミック(19歳、オーストラリア)は、アメリカのサム・クエリー(24歳)を相手に終始落ち着いたプレーぶりで最後はクエリーの自信を砕き、3-6、6-3、7-6(3)、6-3と逆転勝ち。トミックは緩急をつけたプレーでクエリーを翻弄。要所では壁のように安定したプレーで相手からミスを引き出した。彼がベテラン選手だというなら別に普通のプレーなのだが、これを19歳でやり切るあたりに彼の非凡さがある。
ジョン・イスナー(26歳、米国)とダビド・ナルバンディアン(30歳、アルゼンチン)の試合は、フルセットで最終セットが10-8という、この二人らしいデスマッチとなったが、最後はイスナーが勝ち切った(4-6、6-3、2-6、7-6(5)、10-8)。イスナーが奪ったサービスエースはなんと43本。試合時間にして4時間半以上。しかし、緊張感に溢れた試合ぶりで観客は満足したことだろうが、ナルバンディアンも第4セットのタイブレークを落としても闘志を維持し、最終セットを戦い抜くあたりにまだまだ強さが感じられるのは、彼にとってはいい兆しだろう。
男子のボトムハーフは、上位勢が勝ち抜きつつも、やや波乱の種を秘めている。そんな予感を感じさせた大会3日目だった。