パリのローランギャロスで開催中の全仏オープンでは、現地時間8日に男子準決勝が行われ、3連覇を狙うラファエル・ナダルが、第6シードのダビド・フェレールを6-2、6-2、6-1で破り、決勝へと進出した。
試合時間1時間45分。落としたサービスゲームは無し。奪ったウィナー26本に対し、アンフォーストエラー(凡ミス)はわずか16。ナダルがコートの上で示した、王者の王者たるゆえんだ
「敗因を説明するなんて難しいよ。彼は僕よりよいプレーをした。彼は史上最強のクレーコート選手だ」
敗れたフェレールの言葉はみもふたもないが、恐らくこれが実感で真理だ。
ツアー最高とも称されるナダルのフットワークは、赤土の上をスムーズに滑るとき、さらに広範囲を精力的にカバーする。豪腕から放たれる重いスピンは、高くはずみ、相手の制御を許さない。そして何より、集中力。ボールがコートを2度はねるまで、いかなる状況にあろうとも、ナダルはボールを追うことをやめない。
象徴的な場面が、第2セットの第3ゲーム30-30の場面に訪れた。長いラリーのなかで短いボールを追ったナダルは、砂に足を滑らせ尻もちをつく。普通ならここでラリーは終わりだ。だが彼は地面に背中を着けたまま、ラケットをコントロールしボールを返す。この事態を予期できなかったか、フェレールはチャンスをポイントにつなげることができなかった。
「あの場面で僕はすごく集中していた。それまでよいゲームができていたので自信もあった。そして僕はつねにボールを見ている。バランスを崩して倒れても、ボールを見ている。だから反応もできる」
信じがたい一連のプレーについて聞かれても、ナダルはこともなげにそう答えた。
圧倒的な強を示すこの決勝進出者は、今大会ここまでセットを落としていないのはおろか、ブレークされたゲームもわずかにひとつ。それについても「単なる偶然。そこまでサーブが良い訳ではない。現に、ブレークポイントは何度も握られている」とそっけないが、ピンチのときほどギアを上げ、そこから加速するのは今大会のナダルの勝ちパターンだ。準決勝の試合でも、第1セット第4ゲームでふたつのブレークポイントに直面したが、そこを凌ぐと5ゲーム連取。以降、相手にひとつのブレークポイントすら与えなかった。
正に「完璧」といいたくなるナダルの強さ。だが謙虚な王者は、完璧という言葉そのものを否定する。
「僕は完璧なんて信じない。そんなものは存在しないからだ。ここまでこられたということは、僕はよいプレーをしてきたということ。そして、次はもっとよいプレーをしなくてはいけないということ」。
もっとよいプレーのその先には、全仏史上最多の、7つ目の栄冠が待っている。