パリのローランギャロスで開催中の全仏オープンでは、現地時間8日に男子準決勝が行われ、全仏初優勝を狙うノバク・ジョコビッチが、第3シードのロジャー・フェデラーを6-4、7-5、6-3で破り、決勝へと進出した。
昨年の準決勝と同じ顔合わせとなった、ジョコビッチ対フェデラーの1戦。1年前の対戦では、開幕から41連勝と破竹のいきおいだったジョコビッチを、日没間近のセンターコートでフェデラーが退け、観客の大喝采を全身に浴びた。フランス語を話すためか、あるいはクラシックでエレガントさを志向するパリっ子の気質のためか、フェデラーは全仏で圧倒的な人気を誇る。今日の試合で両者に送られた声援にも、その差は明らかだ。だが、多くのファンが望んだ昨年のシーンの再現は、世界1位となったジョコビッチの誇りと、驚異的なコートカバー能力の前に打ち砕かれた。
試合立ち上がりのフェデラーは、昨年の再現を期待させるに十分すぎるプレーを見せていた。赤土を巻き上げ刺さるフォアのウィナー。相手に反応することすら許さぬサービスエース。その速いリズムに飲まれるようにジョコビッチはミスを重ね、第5ゲームでブレークを献上した。
だが最近のフェデラーは、引き寄せた流れを最後まで掌握し、一気にたたみかけることがなかなかできない。晴天から豪雨へと一瞬で天候を変えるほどの強風も、当然ながらプレーに影響した。
「リズムをつかみきることができなかった」
どこか達観したような表情で、試合後にフェデラーはそう認める。だが、時計のように精確に刻むフェデラーのリズムを崩したのは、徹底してバックを突き続けたジョコビッチのしたたかさだ。
第2セットも常に先行したのはフェデラーだが、追い詰められるそのたびに、ジョコビッチはフェデラーの喉元に噛み付いた。窮地に陥ったとき、いちかばちかのギャンブルに出るジョコビッチの不敵さは、精密機械のようなフェデラーのプレーやテニス哲学とは相容れない。逆転で第2セットを失った時点で、フェデラーのなかでの勝利への望みは断たれたのだろう。「ジョコビッチに2セットリードされては、それまでと同じ試合にはなりえない」とフェデラー。「よいゲームをうまくつなぎあわせることができなかった」という第3セットは、38分で失った。
これで今大会の決勝は、ラファエル・ナダル対ジョコビッチの顔合わせに決まった。両者がグランドスラムの決勝で当たるのは、何とこれで4大会連続。過去3回の対戦は全てジョコビッチに軍配が上がっているが、ここ全仏はナダルの城である。これまでの対戦成績は、あまり参考にならないだろう。
フェデラーは「僕の優勝予想はラファだ」といい、ジョコビッチ自身も「僕はこの大会ではラファに3回負けているし、ひとつもセットを取れてない。数字はことごとく、彼が有利なことを示しているよ」と、自分が挑戦者であることを認める。
日曜の決勝でもしナダルが勝てば、ボルグを抜いて史上最多の全仏優勝回数を記録。そしてジョコビッチが勝てば、43年ぶりとなる“4大大会連続優勝”の偉業がなされる。
どちらが勝っても、歴史的な瞬間が訪れることは間違いない。