ロンドンのローハンプトンで開催中のウィンブルドン予選は、21日に女子決勝戦を行い、日本勢は土居美咲がクリスティーナ・ムラデノビッチに、6-4、4-6、4-6で、瀬間友里加はカロリナ・プリスコワに4-6、1-6で敗れた。この結果、日本勢で予選を突破した選手はいなかったが、土居がラッキールーザーとして本戦に出場することが決定した。
土居は試合が終わりベンチに座った直後、込み上げる悔しさが、両の目から止めどなく溢れ出た。
第1セットを奪い、第2セットも4-2とリード。勝利を、そして本戦出場をほぼ手中に収めたはずだった。
ところがここから、最も得意なはずのフォアで、ミスを連発してしまう。勝利を意識し「攻め急いでしまった」がための、ブレークの献上。結局土居は相手に4ゲーム連取を許し、第2セットを逆転で奪われてしまった。
第3セットに入ると土居は落ち着きを取り戻したが、勢いに乗るムラデノビッチも、第2セット途中までのようなミスはしてくれない。第2ゲームで土居がブレークポイントを逃すと、次のゲームでは、フレームショットが土居のコートにポトリと落ちる不運もありムラデノビッチがブレーク。その次のゲームでは、土居が再びブレークポイントをつかむものの、ここで雨天中断となる不運が重なる。
不安定な天候と、要所で決まる相手のサーブ。それらに勢いを削がれ敗れた土居は、手で顔を覆い肩を震わせたまま、しばらく動くことが出来なかった。一方の勝ったムラデノビッチにしても、予選を突破してのグランドスラム出場はこれが初めて。嬉し涙にくれる勝者は、相手の健闘を称えるように、土居の背中にそっと手を置いた。
「相手が良いプレーをしていた訳ではなかったのに、自分のミスで勝ちきれなかった」ことへの不甲斐なさ。そして「もう一歩のところで本戦出場を逃してしまった」ことへの悔しさ。それらが一挙に押し寄せてきたがゆえの号泣。前哨戦のバーミンガム大会ベスト8で得た自信や勢いも、ここで途切れてしまうはずであった。
ところが、ラウンジに戻り着替えている土居のもとに、思いもよらぬ知らせが届く。ラッキールーザーとしての、本戦出場決定。
「えっ、うそでしょ!?」
それが土居の、偽らざる反応だった。
昨年は予選から勝ち上がり、本戦でシード選手を破って3回戦進出。そして今年は、ラッキールーザーとして繰り上がり出場。思えばジュニア時代には、奈良くるみと組んだダブルスで準優勝もしている。土居にとってウィンブルドンは、何かと縁のある大会だ。きっと今回のラッキールーザーも、偶然では割り切れない何かの巡り合わせだろう。そしてきっと土居は、この幸運を単なるラッキーでは終わらせないはずだ。