roger_federer120707.jpgロンドン郊外で開催中のウィンブルドン選手権で、7月6日に男子準決勝が行われ、第3シードのロジャー・フェデラーが第1シードのノバク・ジョコビッチを6-3、3-6、6-4、6-3で破り、3年ぶり8回目となるウィンブルドン決勝進出を決めた。8回の決勝進出は史上最多。またフェデラーは、ウィンブルドン準決勝では負けなしという記録を継続するとともに、決勝で勝てば1位に返り咲くことになる。


※写真は3年ぶりに決勝進出を決めたフェデラー、クリックで拡大
フェデラーの決勝進出にかける闘志と執着心を、理解していた人は少なかったかもしれない。グランドスラム最多優勝をはじめ、あらゆる記録を手中に収めた彼のモチベーション低下を心配する向きは少なくなかった。最近ではジョコビッチやラファエル・ナダルに敗れることも多く、グランドスラムで優勝するのは無理だろうと囁く声も多く聞かれた。だがフェデラーの闘争心と、自身の可能性への信頼はゆらいでいなかった。
「去年のツォンガ戦の敗戦は、受け入れがたいものだった。再び決勝に進むため、僕は1年待った」
2年連続のウィンブルドン準々決勝敗退は、元王者の胸に火を灯していた。
その1年越しの執念は、立ち上がりのプレー、とくにサービスゲームでの集中力に顕著に現れる。ファーストサーブ成功率が高いだけでなく、セカンドサーブでのポイント獲得率も80%以上を記録。第5ゲームで気持よくエースを2本決めると、次のゲームでは30-0から4ポイント連取でブレークに成功する。この試合初めて、そして第1セットで唯一のブレークポイントを攻撃的な姿勢でつかみ取り、まずは第1セットを先取した。
だが第2セットは、ジョコビッチが巻き返す。第2ゲームで、ワンチャンスをものにしてこの試合初ブレーク。フォアのクロスでの打ち合いで押し込む場面が目立ち、フェデラーが得意とする回りこんでの逆クロスを打たせない。フェデラーのサーブ成功率が下がったことにも乗じ、第2セットはジョコビッチが奪い返した。
そして試合は、両者そろって「ターニングポイントだった」と振り返る第3セットに突入する。このセットでフェデラーは、再び第1セットと同等の攻撃性を発揮し第2ゲーム、そして第6ゲームでもブレークポイントをつかんでいく。だが、4度あったチャンスを逃すと「これで流れが変わるかも」との思いに襲われたという。
第9ゲームではジョコビッチがブレークポイントを握るが、ここでフェデラーはサーブを3本決めて窮地を脱する。するとつづくゲームでは、ジョコビッチがスマッシュを大きくアウトさせるという、決定的なミスを犯してしまった。「第3セット終盤のゲームが、試合そのものを決してしまった」とジョコビッチも悔いる分岐点。このゲームをブレークしたフェデラーが第3セットを、そして続く第4セットも一気に奪い去る。第4セットでは、相手に一度もブレークポイントを与えない、圧巻のプレーであった。
一体、コート上でまだ何を証明しようとしているのか?
会見でのそのような問いに、ウィンブルドン6度の優勝を誇る男は「何かを証明しようなどと考えていない。勝ちたかった。とにかく決勝に行きたかった」と答える。だがもちろん、決勝進出は彼が最終的に欲しているものではない。
「まだ大会は終わっていない。だから僕は、今日勝っても涙を流し、コートに膝をついて『欲しかったものを全て手にした』などと思ったりしないよ」
心から欲する決勝戦での勝利を得たとき、フェデラーは再び世界1位、そしてピート・サンプラスと並ぶウィンブルドン最多優勝者となる。