オーストラリアのメルボルンで開催中の全豪オープンは、26日に女子決勝を行い、第1シードのビクトリア・アザレンカが第6シードの李娜(リー・ナ)を、4-6、6-4、6-3で破り連覇を達成した。オープン化以降、同大会のタイトルを守った選手は8人目。同時にアザレンカはこの優勝により、世界1位のポジションも確保した。
“オーストラリアの日”に行われた一戦は、全豪決勝にふさわしい内容であり、同時にいくばくかの気まずさも残した。第3セット李娜が2-1とリードした場面で打ち上げられた、
オーストラリアの日恒例の打ち上げ花火。この花火を待つための、9分間の中断が明けた直後のことである。ボールを追って走り、方向を変えようとした李娜は、左足を捻り転倒。「あっ!」と声を上げ、倒れた拍子に頭をコートに打った。「頭を打ったあと2秒くらいは、目の前が真っ暗になった」という救急事態に、メディカルスタッフが慌てて駆け寄る。さらにはこの時に捻った左足は、第2セット途中に負傷したばかりの部位だ。この事態が起きた後、李娜は1ゲームしか取ることが出来ず敗れ去った。
本人は試合後に「転倒はプレーに影響は無かった。大切な場面で、相手の方が良いプレーをした」と言い訳はしなかったが、当然のように転倒は李娜にとり大きなハンデになったろう。だが、手負いの相手と戦う難しさは、過去のいくつもの試合が証明している。花火や予期せぬメンタルタイムアウトが重なる難しい状況の中、アザレンカは集中力を切らさず、目指すゴールへと走りきった。第1セットはミスが多かったが、第2セット以降は緩いボールやロブも織り交ぜ、相手を走らせ自分のミスは減らせていく。今大会の彼女を象徴するかのような、我慢と執念で手にしたタイトルだ。
「長い2週間で、伝えたい言葉はたくさんあるけれど、大切なことだけここでは言うわ」
表彰式でアザレンカは、涙で声を上ずらせファンや支えてくれたコーチ達に感謝の意を伝える。さらには「李娜はとても不運だった。彼女は素晴らしいプレーをしていたし、とても良い新シーズンのスタートを切った。今年が良いシーズンになることを願っているし、これからも何度も対戦したいと思っている」と、ケガを負いながらも最後まで戦いきった対戦相手をたたえた。
準決勝後のメディカルタイムアウトを巡る喧騒やなど多くの物と戦ってきたアザレンカは、今大会最後となる会見で、「長い2週間だった。全ての経験は、私を選手としても人間としても成長させてくれる、良い勉強になった」と、プレッシャーから開放された安堵と歓喜の混じった笑顔を見せた。
※写真は、李娜に勝利し全豪オープン2連覇を達成したビクトリア・アザレンカ
Photo by Hiroshi sato