9月15日 広島市の「広域公園テニスコート」で行われた花キューピットオープン。
シングルス決勝戦で、日比野菜緒(ブラス)が土居美咲(ミキハウス)を6-3、6-2で下し優勝した。
続く、二人が組んだダブルス決勝ではマクヘイル(アメリカ)/サビンキ(ロシア)組を3-6、6-4、ファイナル・セット・マッチタィブレークを [10-4]で取り、優勝した。
日比野菜緒単複優勝
選手や関係者たちの願いと切磋琢磨
文/写真 内田暁(テニスライター)
夏の残照が秋の気配を凌駕する青空の下、二人の日本人が二度までも、天にトロフィーを掲げた。
ひとりは、日比野菜緒。もうひとりは、土居美咲。
二人は、日本開催のWTAツアー大会 “花キューピットオープン(ジャパンウィメンズオープン)”で、頂上決戦を実現する。ツアーでの日本人決勝は、1997年に沢松奈生子さんと吉田友佳さんが対戦して以来、実に22年ぶり2度目のこと。この時は、沢松さんが優勝トロフィーを手にした。ちなみに日比野の「菜緒(なお)」の名は、テニス愛好家の母親が、沢松さんにあやかって付けたものである。
さらに日比野と土居の二人は、ともに組んでダブルスでも決勝へと勝ち上がる。シングルスでの戦いを終え、表彰式を終えた僅か30分後にコートに戻ってきた二人は、今度はネットの同じサイドに立ち、二人で優勝を勝ち取った。
東京で長く開催されていたこの大会が、メインスポンサーの名を冠して“花キューピットオープン”として広島に移ったのは2年前。会場は、1994年のアジア大会開催地である。
日比野と土居の両者には、ぞれぞれが自らの栄冠を追い求めると同時に、今大会で活躍したいと切望する、もう一つの願いもあった。それは、日本でのテニスの人気や知名度をあげたいとの思い。確かに今、大坂なおみの活躍があり、女子テニスがニュースに取り上げられる機会も増えはした。ただ話題の多くは大坂に集約され、他の選手や、大坂が出ない大会に注目が集まることは少ない。その状況をなんとか変えたいとの使命感に似た思いも、大会を戦う日本人選手たちにはあった。
とはいえ実際にコートに立てば、彼女たちを駆り立てたのは勝利への渇望だ。そしてその情熱と、情熱により磨かれた技や肉体の表現力が、会場で直に見る人々の歓声を誘った。
決勝戦では、小柄ながら全身をバネのように用いて強打を放つ土居のインパクト音と球の軌道の鋭さに、客席から幾度もどよめきが起きる。だが日比野は、攻撃力による土居の支配を許さない。地道に鍛え上げてきたフィジカルと、この春からメンタルコーチにも師事し改善してきたメンタルを融合させ、土居の強打を拾いまくった。特に、土居を戸惑わせたのが、以前は弱点と見られていたフォアハンドの安定感。「みんな私のフォアを攻めてくるので、鍛えられた」という日比野は、フォアでもミスなくラリーを組み立て、土居の焦りとミスを誘った。一見すると土居の自滅にも見えた展開は、お互いをよく知るからこそ効果を発揮した、日比野の急成長が引き出したものだった。
シングルスの表彰式で日比野は、ダブルスパートナーでもある土居に、「これからも美咲ちゃんの背中を追って行きます」と言葉をおくり、そしてトーナメントディレクターの水谷氏にも「いつも選手ファーストに対応をしてくださる水谷さんのためにも、いつかこの大会で優勝したいと思っていた」と感謝する。
そして何より、会場に足を運んだファンに「この一週間、皆さんの声援が本当に力になりました」と謝意を述べた。
選手や関係者たちの願いと切磋琢磨――。
それらの結晶こそが、今回の日本人決戦であり、日比野の単複二冠だ。
日比野菜緒、土居美咲
17日には東レPPO1回戦
優勝した二人はすぐに大阪に移動、東レPPOに出場する。17日(火)には共に1回戦を戦う。
日比野は予選勝者のV・フリンク(22歳、149位、ロシア)、12時半以降。
土居は44位、K・ムラデノビッチ(26歳、フランス)と対戦、試合は17時以降だ。
第1シードの大坂なおみ(日清食品)は初戦である2回戦で、世界ランク181位のV・トモバ(24歳、ブルガリア)に決まった。試合は18日(水)以降だ。オーダー・オブ・プレー
9/9-9/15
会場:広島市 広域公園テニスコート
<<シングルス決勝>>
◎日比野菜緒 63 62 ●土居美咲
<<準々決勝>>
◎日比野菜緒 46 60 63 ●ブザネスク(ROU)
◎土居美咲 64 63 ●2]クデルメトワ(RUS)
<<準々決勝>>
◎日比野菜緒 64 63 ●1]謝淑薇(台湾)
◎土居美咲 75 61 ●7]ソリベストルモ(ESP)
シングルスドロー
予選ドロー
<<ダブルス決勝>>
◎土居/日比野 36 64 10-4 ●マクヘイル(USA)/サビンキ(RUS)
<<ダブルス準決勝>>
◎土居/日比野 63 64 ●加藤未唯/サンダース
◎マクヘイル/サビンキ 64 61 ●加治遥/波形純理
ダブルスドロー
第1シードの二宮真琴/穂積絵莉組は準々決勝でマクヘール/サビニフ組に5-7, 2-6で敗れた。
今週は大阪で東レPPO
記事:塚越亘 塚越景子 写真:内田暁