4月11日に開催された『JPTT盛田正明杯』にて鈴木貴男が現役最後の試合を戦った。対戦相手となったのは、24歳の中川直樹だ。
44歳の鈴木とは実に20歳の年の差があり、昨年全日本選手権で初優勝を成し遂げた中川と、彼が生まれた年に全日本を初制覇した鈴木の戦いは、結果よりも多くの人がその内容に注目した。中川は「貴男さんの最後の対戦相手になれて光栄です」と、リスペクトとともに臆することなく得意のサービスとストロークで試合を組み立て、時にはネットを取りオールラウンドなプレーを展開する。一方鈴木は、サーブ&ボレー、チップ&チャージ、そして低く滑るスライスなど、代名詞ともいえる技を披露し、今できる力の限りを尽くした。
惜しみない温かい拍手に包まれ終えた試合後の会見では「思っていたよりもスムーズにいったし、スッキリしている」と鈴木は笑顔を見せる。また、相手の中川に関しては「全日本の映像だったり、彼が練習している風景を見ていて情報はあったが、スピード感、躍動感があるし駆け引きをしてきた。もちろんストロークはベースであるけれども、思っている以上に彼のネットプレーの柔らかさ、一度もミスしなかったファーストボレーなど、器用にこなす選手」という印象を持ったという
中川は「あれくらいリターンダッシュしてくる選手は今ほとんどいないのでプレッシャーはかかります。でもある程度準備はしていましたし、そこからの駆け引きという勝負だった」と何を打つか、どこに打つか…といったコート上の2人にしか感じられないせめぎ合いがあったことを口にした。
ツアーコーチになる鈴木を今後コーチとして迎える可能性はあるか、という問いに中川は「あると思います。貴男さんの解説を聞いて面白いと思いましたし、今日もアドバイスをいただいたのですが、コーチとしてだけではない、選手という目線でアドバイスがあり、納得できるものだったので…」と可能性を示唆した。
折しも別々に行われた会見で2人は似た発言をしている。
例えば鈴木は、選手を指導するにあたり「短所を補うことも必要だけど、ここを伸ばしていけば戦えるチャンスが絶対あるよね、ということを見つけ、より良くするための道を探っていきたい。悪い部分を良くすることをは大事だけど、いいものを世界で通用するためにもっとこうしてみよう…ということをいい形で共有していきたい」という。
そして今度どう成長していきたいか、という問いに中川は「(自分は)フォアハンドやサービスを軸にやっていくスタイル。もちろん短所の練習もしていますが、僕はそれより長所のほうに目を向けてやっていこうと思うので…。そこでどう攻めていくかを意識していきます」と発言した。
9歳の少年だった頃、ジャパンオープンのフェデラー戦で鈴木をテレビで見て、「サーブ&ボレーですごく前に出ていて、こういう日本人選手がいるんだ…と思った」という中川。初めての対戦となったこの1セットマッチで、彼らはプレーを通し、多くのことを語り合っていたのかもしれない。
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