4月10、11日に開催されたJPTT盛田正明杯(スポーツ庁後援)は、プロチームや実業団、大学生や高校生が団体戦で戦う新しいトーナメント戦となった。早稲田大学はプロテニス選手会選抜を破る快進撃を見せベスト4へ。順位決定戦でもレック興発を破り3位になるなど、大健闘となった。
もう一つの大学チームである慶應義塾大学は、1回戦でプロと社員の混成チームの伊予銀行と対戦し、敗れた後は、早稲田大学に敗れた柳川高校とコンソレーションを戦った。この大会で彼らは何を得たのだろうか。選手たちに聞いた。
ダブルスで伊予銀行に勝利した白藤成/成耀韓は「学生大会は色々背負うものがあるのですが、この大会はトライしていく、学生が挑戦していくという雰囲気があるので、もちろん緊張はしましたが、試合を通していつもよりいいプレーができたと思います」(白藤)「僕たちは失うものがないので、思い切りやれるという点で、勢いだったり、プレーの質が違った」(成)と、学生大会では得られない経験ができたという。
シングルス1としてプロの片山翔と戦った羽澤慎治は、「自分の試合としては出しきれず不完全燃焼で終わってしまったのですが、勝っても負けても試合でしか得られない経験があった」と言い、対戦相手の片山について「真ん中を外さず打ってくる。しかもタイミングが早くてどんどん押し込まれる」とストロークのクオリティの高さを体感した。
シングルス2の藤原智也は、昨年4月に手首の手術を受け、夏の終わりからようやくテニスに復帰した。9月から試合に出てはいたが、コロナ禍ということも相まって「テニスとはあまり縁がなかった」1年を過ごした。新年度を迎えて参戦したこの試合は、「実業団の選手とは普段やらない中、負けはしましたが思い切りぶつかって、競った試合ができた。その後、高校生との対戦ではどっちかというと追われる立場のプレッシャーを味わいました。すぐに学生の大会が始まるのですが、その前にいい刺激をもらって、また学生の大会に戻れるというのは本当に良かったと思います」と1日で追う者から追われる者となる環境で戦えたことを収穫とした。
大学ラストイヤーを迎え、卒業後はプロになる予定の羽澤は、「大学生という立場で出させていただいて、本当にありがたいと思いました。こういう機会が自分が高校生のときにもあったら良かったと感じたので続けてほしい」と今後の存続を願う。
そして、一度はプロになったが、その後大学へ進んだ白藤も「同じスポーツをやっていても環境が違うと戦う機会はほとんどない。そういう人たちが集まって試合をするのは、テニス界全体を通して戦っている雰囲気になるので、今後もこういう大会があると盛り上がっていくような気がします」と、プロと学生両方を経験している立場から見解を述べた。
1セットマッチという気の抜けない戦い、そしてそれぞれの立場がもたらす勢いや緊張感…。この大会で彼らは多くの収穫を得たようだ。