ショッピングモールでのイベントや、他競技とのコラボイベント等は、テニスの裾野を広げるためには必要不可欠なイベントと言えるだろう。そういった活動に、積極的に参加しているのが、プロテニスプレーヤーの笹原龍だ。
宮城県・仙台市でテニスを始めた彼は、高校卒業後、カリフォルニアのワイルテニスアカデミーへのテニス留学を皮切りに、フロリダのアカデミーやヨーロッパ各国を回り、選手活動をしていた。現在はコロナ禍の影響で遠征は控え、国内でのプライベートレッスンを主体としている。
昨年は、一般財団法人UNITED SPORTS FOUNDATIONが主催するスポーツ体験イベントのテニス部門を担当し、イオンモール柏店では、テニピン体験会で初心者の子どもたちとラリーを行った。
こういった状況を「僕は、運とタイミングとご縁に恵まれているようです。本当に感謝です」と言い笹原は笑う。しかし「18歳の時に遭遇した」東日本大震災の経験や、海外での生活が長かったこともあり、テニスボールを発展途上国へ寄付するといった活動実績があるからこそ、自然と声もかかるのだろう。
スタートは“サービスエリアでのテニスレッスン”だという。談合坂サービスエリアでファミリー向けのテニス体験会に声がかかったのだが、「正直プレッシャーでした。人が来てくれるのか、楽しんでもらえるか、事故が起きないか…心配しました」
結果的にイベントは大成功だった。大きなネットへ向かってボールを打つようにし、大人も子どもも適度に身体を動かす体験会になったという。
こういった笹原の活動を評価した日本財団との縁が生まれ、昨年12月には、アスリートの社会貢献活動を労う『HEROs AWARD 2021』への出席を果たした。
テニス界からは初めてというこのセレモニーにあたり、「しっかりインパクトを残すため」一番目立つ服装で出席し、財団アンバサダーの中田英寿さんや、安藤美姫さん、五郎丸歩さん、水谷隼さんらと交流を図った。
「僕にとっては、感動したという言葉を超えるほどの感覚を味わうことができ、とても貴重な体験でした。財団の方も色々な方をご紹介してくださいました。また、ALSを発症の中、クリエイティブ活動を積極的に行っている武藤将胤さんを、僕の枠でご招待させていただきました。とても喜んでいただけたし、僕自身にとってもこの会への出席が、今後の活動に生きるものになっていくと思っています」
2022年は日本財団での社会貢献活動を始め、色々なイベント等への声がかかっている。
「ありがたいことです。朝起きてメールをチェックすると、毎日新しいお話が入ってきており、テンションが上がります」
自身の試合参戦に関しては、現在ITFのポイントを保持していないため、国内大会からの出場となる。しかし、これまでの戦い方とは異なり、今後の活動も踏まえたものになっていく。
「僕も今年で30歳になるので、こういったことを普及にどう役立ていくか、という勉強もしながらの出場になると思います」
テニスの経験がない人に、少しでも多くラケットを握ってボールを打ってもらうこと、そして何より楽しいと思ってもらえることを一番に、地域のスクールと連携を生み、体験した人が一人でも多くテニスに触れてほしいと願う。さらには、これらを多くのプロ選手と共に広げていきたいと考えている。
笹原の「テニスの裾野を広げたい」という思いと活動は、これから大きな広がりをみせていくことだろう。
取材:保坂明美 写真:本人提供