11月20日、ＡＴＰチャレンジャーツアー「兵庫ノアチャレンジャー」の決勝が、ブルボンビーンズドーム（兵庫県・三木市）で行われた。
■男子シングルス決勝
◯[7]綿貫陽介（フリー）6-7(3) 7-5 6-4 ●フェデリコ・フェレイラ・シルバ(POR)
第７シードの綿貫陽介（フリー）と、フェデリコ・フェレイラ・シルバ(POR)の対戦は、激戦と呼ぶにふさわしい決勝となった。
立ち上がりは、決勝という舞台という緊張感の中で、第３ゲームからお互い１ブレークずつで試合が進む。
準決勝で、 第１シードのクリストファー・オコネル（AUS）に横浜チャレンジャーでのリベンジを果たした綿貫は、その試合での精神的な疲れもありつつ、決勝という舞台に「めちゃくちゃ緊張していた」という。タイブレークでは、さらに緊迫した場面となり、硬さが抜けずに、6-7(3)でセットダウンを許す。
相手のシルバは、今大会で第３シードのリンキー・ヒジカタ（AUS)を倒した上、準々決勝、準決勝と、ファイナルにもつれるタイトな試合を制してきただけあって、球際の強さをみせる。ネットに詰める綿貫を何度もパスで仕留め、挑戦者の勢いがあった。
「途中、何度も諦めそうになるくらい、相手は強いし、本当に気持ちが抜けかけた」
しかし、この感覚が、少しずつ緊張を解きほぐす結果になったという。自分を鼓舞し、リターンのポジションを下げたりしながら、「どうすれば相手のサービスにプレッシャーがかかるか」と正解を探しながらプレーを続けた。６−５で迎えた相手のサービスゲームでは、リターンを全て相手コートに返し、強打を凌ぎ、果敢にネットラッシュを見せて、第２セットを奪い返した。
続く第３セットは、「意地の張り合い、というか頑張り合いというか…」綿貫はこう振り返った。勝ちたい思いの中でキープを重ねた５−４の第10ゲームは、これまでの戦いを集約するかのような、ラリー、ネットプレー、サービスとリターンの駆け引きが繰り広げられる。
６度のデュースを繰り返し、綿貫が迎えた３つ目のマッチポイント。シルバのフォアがラインを割り、２時間53分の戦いは、綿貫の優勝で幕を閉じた。
「耐える時間が長かった」
疲労感を漂わせつつも、表情は喜びに満ちている。2019年、自身のチャレンジャー初優勝に続く２度目のタイトルもこの兵庫で手にしたこととなる（20、21年はコロナ禍により開催されず）。
「今年、日本で４大会連続チャレンジャーを開催してくれるのは、本当にありがたい。自分はこの時期、ディフェンドするポイントもあったし、全豪予選に入れるかどうかという状況だった。来年大きくランキングを上げていきたいと思っている中では、重みのある、うれしい１勝」
また、家族やスタッフのサポートもあったことが、大きな支えとなっている。
「以前は自分１人でやっているところがあったのですが、今年はスポンサーでも色々苦労したし、そういう重みは昔よりも感じられるようになった」
苦しんで手に入れた２勝目は、それ以上の価値あるものとなった。
取材・写真／保坂明美
