千葉県柏市の(公財)吉田記念テニス研修センター(TTC)において、男女共催のITF大会(2万5000ドル)『かしわ国際オープンテニストーナメント』が開催。4月9日(日)は、男女決勝2試合が行われた。

女子は第1シードのチャン・スジョン(韓国・119位)と、第2シード日比野菜緒(ブラス・137位)の決勝戦。ネットに出てフィニッシュするテニスに取り組んでいる日比野は、この日も積極的なネットラッシュで相手にプレッシャーをかけていった。

対するチャンもネットプレーを織り交ぜたプレーで勝ち上がってきており、お互い譲らないスタートとなる。

日比野菜緒

日比野は「1週間の中で今日が一番良い出来だった」と語るように、高い集中力を維持してペースを掴む。途中先にブレークを果たした後、すぐにブレークバックされるという展開もあったが、6−4で第1セットを奪取する。

甲府の2万5000ドルで優勝し、連戦となっていたチャンは、第1セットが終わるとメディカルタイムアウトを取り回復を試みるが、さらにプレーの質が上がった日比野に付け入るスキはなかった。第2セットを6−3で取り、見事優勝を収めた。

チャン・スジョン

今大会、日比野の勝ち切る能力の高さは、2万5000ドル大会の中で際立っていた。ファイナルセットへもつれても、「あまり体験したことがなかった」という強風の中でも、ナイン・イレブンという長いボールローテーションでも、心においていたのは「結果に一喜一憂せずに自分のやれることを淡々とやる」ということだった。

また、試合でいかに”相手にプレッシャーをかけられるか”ということにおいても、日比野自身の勝負哲学を貫いた。

「調子が悪くて2−5とか1−4になったとしても、やっぱり試合を閉めることは簡単ではありません。相手の立場になって考えてみれば、その状況で1本でもポイントをしっかりプレーすれば、必ずプレッシャーを与えられるはず」

ボールを拾うその仕草でも、その状況を創出できると言う。

「色々な人の試合を見て思ったのは、ボールを拾いに行く姿でも、その人の雰囲気が出るということ。男子のスー・ユーシャオは、ずっと胸を張って、毅然としていました。トボトボ歩いて拾う選手と比べたら、それだけでも相手に与える影響は大きいと思います」

一つひとつを見れば小さなことかもしれない。しかし、それを常にやり続ける根気強さがどれだけ大切か、また、その積み重ねが勝ち切る強さへと繋がっていくことを、日比野は理解している。

「サバレンカやルバキナのように体格の大きい選手を前に、パワーテニスで行かなきゃと思う時期もあったのですが、年齢を重ねて、そうではないところでも戦えると思えるようになりました。私なりのテニスで勝つチャンスはあるんじゃないかと思えたことが、心の余裕にもつながっています」

「今やっていることの精度を上げていきたい」という日比野は、来年に控えたパリ五輪を目指し、ツアーレベルにランキングを上げることを現在の目標としている。

「あとどれくらいやるかわからないですが、最後にひと花咲きそうな自分に期待はしています」

と、トレードマークである笑顔を見せた。

男子は第1シードのスー・ユーシャオ(台湾・206位)が、韓国のイ・ジェムン(757位)に1時間足らずの6−1 6−1で圧勝する。前週の筑波に続き、シングルス、ダブルスともに優勝し、この2週間、完全制覇となった。

筑波、柏とシングルスは1度もセットダウンなく2連勝したスー

■4月9日(日)の試合結果
・女子決勝
日比野菜緒[2](ブラス)6-4 6-3 チャン・スジョン[1](韓国)

男子決勝
スー・ユーシャオ[1](台湾)6-1 6-1 イ・ジェムン(韓国)

左から女子優勝日比野、準優勝チャン、男子優勝スー、準優勝イ

大会公式サイト

取材・写真/保坂明美