9月に行われたITFM25 『UCHIYAMA CUP』と『SBC DREAM TENNIS 国際大会』にて、中川直樹が2週連続優勝を果たした。

アメリカ、香港のITFを経て、この2大会連続優勝でATPランキングは373位へと上昇した。『UCHIYAMA CUP』の1週目こそ、優勝した関口周一に準決勝で敗退したが、サービスゲームを優位に運び、ストローク力、ネットアプローチといったオールラウンドなプレーで相手を翻弄する総合力は、M25クラスでは頭ひとつ抜けている感があった。

中川がこの日本のITFに出場したのは、「安定してチャレンジャークラスを回れるランキングにしたかった」という思いがあったから。

ジュニア時代は盛田正明テニスファンドの支援を受け、IMGへ留学し、全米ジュニアのダブルスで優勝するなど、未来を嘱望された中川だが、2014年にプロ入り以降は、手首の手術、ヒジの痛みに苦しむなど、思い通りにツアーを回ることができなかった。

2020年に全日本選手権優勝、ITFでこの2大会も含め5勝を挙げたが、何よりその結果に満足していないのは中川本人だった。

現在26歳、11月で27歳となる今年、4年間契約していた橋本総業ホールディングスとの所属契約を9月いっぱいで終了し、退路を絶って今後のツアーに臨む。

「この1、2年が勝負の年だと思っています。橋本総業さんには苦しい時、本当にお世話になったのですが、日本リーグの時間を試合やトレーニングに充てたいと思い」苦渋の決断となった。

「最低でも2週は優勝したいと思っていた」との言葉どおりポイントを稼ぎ、キャリアハイ に達した現在、10月はアメリカ、その後は日本のチャレンジャーを回る予定だ。

それにあたり「アメリカでは外国人コーチのトライアルも予定していて、視野とかテニスの幅とか広がるといいと思っています」と、環境の変化へも踏み出した。また、フィジカルコーチとともに身体作りにも取り組んでいる。

現在見据える目標は、チャレンジャーの優勝、そしてグランドスラム予選の出場だ。

「ちょっとしたことでだいぶ結果が変わってくると思いますし、勝てると思っています」

かねてから中川の実力には、他の日本男子選手からも賞賛の声が上がる。そのポテンシャルに強いフィジカルと意志を乗せて、勝負の年を駆け抜ける。

取材/保坂明美 写真/UCHIYAMA CUP・SBC DREAM TENNIS/長浜功明