女子テニスの国別対抗戦『ビリー・ジーン・キングカップ BY ゲインブリッジ・ファイナル予選(BJK杯)日本vsカザフスタン』2日目が、4月13日(土)有明コロシアムにおいて開催された。

杉山愛BJK杯日本代表監督が今回代表として選出した選手は、日比野菜緒(ブラス)、大坂なおみ(フリー)、本玉真唯(島津製作所)、柴原瑛菜(橋本総業ホールディングス)、青山修子(近藤乳業)の5人。

1日目に日比野、大坂が2勝し、チーム勝利まであと1勝と迫るこの日は、第1試合で日比野対ユリア・プチンツェワのエース対決が行われ、日比野が6-4,3-6 7-6(7)の接戦で勝利した。これで日本は11月にスペイン・セビリアで行われるBJK杯ファイナルズに進んだ。

日比野は立ち上がりからキレのあるサービス、ストロークを見せ、第1セットは第7ゲームでラブゲームでブレークを果たして先取する。第2セットはギアを上げてきたプチンツェワが、少し疲労の見えた日比野から取り返し、勝負はファイナルセットへ持ち越された。

「相手のレベルが絶対落ちることはないから、勝つなら菜緒もレベルをキープしなきゃだめだよ」と、杉山監督は日比野の背中を押す。お互い気持ちが途切れてしまってもおかしくない中、ブレークされればすぐにブレークバック。キープをすればキープと、並走でタイブレークへ。

勝利に指先までかかったのはプチンツェワだった。攻撃的なリターンでプレッシャーをかけ、6-2とリードする。しかしそこから日比野が脅威の追い上げを見せ、4ポイント連取して並ぶと、会場のボルテージとともに「覚えていない」というほどの集中力を発揮し、勝利を収めた。

マッチポイントでボレーを決めた瞬間、日比野の目に涙が溢れる。それは勝利までの道のりがいかに険しかったのかを表すようだった。

「私の中で日本代表としてBJK杯で優勝するというのが一つの夢だったので、それに近づけたということと、このチームでファイナルに行けるんだと思ったら自然と涙が出てきた」と、その理由を語る。

団体戦ではなかなか力を発揮できなかったという日比野だが、「杉山監督や奈良(くるみ)さんが『団体戦で100%の試合ができなくてもいい。60%くらい出せればいい。それくらい団体戦が難しいことはわかっているから…』と言って下さったことによって、パーフェクトでなくても、ベストを尽くそうと思えた」ことが、キャリアの中でも大きく、そして感情が溢れるほどの勝利を手にすることへとつながった。

日本代表メンバー 写真:鯉沼宣之

杉山監督は就任にあたり、ファイナルズでの優勝を目指すこと、そしてみんなに応援してもらえる魅力あるチームづくりをしていくことを目標に掲げた。しかし、監督としてただただ選手をプッシュするのではなく、個人個人と何がベストなのかを話し合いながら、”寄り添う”というスタンスをとっている。それは監督自身の選手としての経験によるところが大きい。

「私自身、選手で戦っていたときに、気持ちのコントロールの難しさであったり、普段のツアー以上のプレッシャーを感じることもあった。また、シングルスNo.1、2そしてダブルスと、全ての経験があるからこそ、それぞれの選手の立場になって言えることがある。みんな性格も違えば、その日の調子も違う。それらを日常のコミュニケーションの中で把握しているからこそ、アドバイスもできる」

60%でいいという声かけで「120%の力を発揮できた」と言う日比野、「私はある程度のことを自分で考え、消化したいタイプなので、それからゲームプランを話せるのがいい」と言う大坂と、それぞれの個性を尊重している。

監督就任のアジア・オセアニアゾーングループから1年4か月。個性の集合体として魅力を放つ日本チームは、11月のファイナルズでも光り輝くことだろう。

青山修子/柴原瑛菜ペア 写真:鯉沼宣之

日本勝利が決定したため、シングルスの第2試合は行わず、ダブルスのみを行い、青山修子/柴原瑛菜ペアが、6-7(7),6-3 [9-11]でアンナ・ダニリナ/ジベク・クランバエペアに惜しくも敗れた。

【2024ビリー・ジーン・キング・カップ by Gainbridgeファイナル予選/日本vs カザフスタン】

■大会1日目 4月12日(金)の結果
◯日比野菜緒 6-0 6-0 ●アンナ・ダニリナ
◯大坂なおみ 6-2 7-6(5) ●ユリア・プチンツェワ

■大会2日目 4月13日(土)の結果
◯日比野菜緒 6-4 3-6 7-6(7) ●ユリア・プチンツェワ
●青山修子/柴原瑛菜 6-7(7),6-3 [9-11] ◯アンナ・ダニリナ/ジベク・クランバエワ
※BJK杯ルールにより、2日目第1試合で勝敗が決定したため、第2試合の大坂なおみ VS アンナ・ダニリナの試合は行われず。

【オフィシャルサイトはこちらから】

取材/保坂明美 写真/鯉沼宣之