ATP500「木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス」が、有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コートにて9月25日~10月1日(本戦)にわたって開催された。最終日となる10月1日にはシングルスとダブルスの決勝が行われ、シングルスは20歳のA・フィスが、26歳のU・アンベールとの3時間に及ぶ激闘の末に勝利を手に入れて頂点に立った。

世界24位のフィスはノーシードでの出場で、今大会の台風の目となった。1回戦では第1シードのT・フリッツを、準々決勝ではディフェンディングチャンピオンのB・シェルトンをフルセットの死闘の末に破り、準決勝ではH・ルーネと大熱戦を演じて、決勝の舞台に駒を進める。トップ20の3選手を倒しており、簡単な試合など1つもなかった。

そして、決勝の相手は同じフランス人でパリ五輪ではダブルスも組んだ19位のアンベール。ランキングは倒してきた選手より低いが、アンベールはツアーの決勝6戦全勝という強さを誇っているため、「大変な試合になることはわかっていた」と言う。そして、アンベールとの戦績は3戦0勝で勝ち星がない。「一生懸命やるだけ」と心に決めてコートに立った。

トップ20選手3名を倒して決勝の舞台にたどり着いたフィス。写真:鯉沼宣之

激闘の連続で身体が思うように動かないのか、第1セットは精彩を欠き5-7で失う。第2セットではアンベールが徐々に調子を上げる一方、フィスは「サービスゲームのキープが難しかった」と、3-4の自分のサービスゲームで0-40と追い込まれた。「ほとんど負けそうだった」が、そこからサービスが冴えて切り抜け、タイブレークへ突入する。

競った内容だったが、アンベールにマッチポイントを握られてしまう。その上、左利きのアンベールが最も得意とするアドサイドからのサービス。フィスはこのサービスのリターンに苦労していたが、この重要な場面で成功すると、「今週でベストのバックハンド」を繰り出して、ストレートにパッシングを決めてマッチポイントをセーブした。第2セットは「少しのラッキー」もあり、フィスが手に入れた。

「負けそうになったところを切り抜けたことで、今日は勝てるのではという気持ちが出てきた」ファイナルセット。フィスのプレーレベルは明らかに上がった。「彼はツアーでもベストサーバーの1人。左利きで、サイド、T、ボディに来るので、ポジショニングが大事」と警戒していているサービスに対しても、リターンを返せるポイントが多くなっていく。4-3のゲームではこの試合2度目のブレークに成功し、6-3で3時間5分に及ぶ死闘に終止符を打った。

7度目のツアー決勝で始めて黒星を喫したアンベール。写真:鯉沼宣之

コートで大の字になり喜びをかみしめた後、「兄のような存在」であるアンベールとしっかりとハグをした。恒例の勝者がカメラに書くメッセージでは、「LOVE Ugo♡」と書き、表彰後の写真撮影では2人で肩を組み仲の良さがうかがえた。

フィスは3つ目のツアータイトルを手に入れ、今大会で2番目に若いチャンピオンとなった。魅力的なプレーもポテンシャルの高さも見せた若手が、今後さらに飛躍することを期待したい。

友人同士でもある2人は最後固い握手を交わした。写真:鯉沼宣之

-10月1日(火)の結果-
■シングルス決勝結果■
〇A・フィス(フランス)5-7 7-6(6) 6-3 ●U・アンべール(フランス) 


■ダブルス決勝結果■

〇J・キャッシュ/L・グラスプール(イギリス)6-4 4-6 12-10 ●A・べハール/R・ギャロウェー(ウルグアイ/アメリカ)


構成:Tennis.jp 写真:鯉沼宣之