日本最高峰のタイトルをかけ、選手たちが凌ぎを削る「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権 99th」(本戦10月4日〜13日)。10月11日は女子シングルス・ダブルス決勝、男子シングルス準々決勝、ダブルス準決勝の計8試合が行われた。

石井さやかがポテンシャルの高さを披露

第3シード19歳の石井さやかと、第1シード18歳の斉藤咲良の対戦となった女子シングルス決勝は、6-2 3-6 6-4で石井が齋藤を破り、初優勝を果たした。 ジュニア時代から凌ぎを削った2人の対戦は、石井はパワフルなサービスとフォアハンドを軸に攻撃し、齋藤は手堅いストローク力と、展開力で勝負する、現在の女子テニスの象徴となるような対戦となった。

第1セットは、石井の独壇場とも言える展開だった。センターへ放つサービスエース、ライン際を狙わなくとも相手のラケットを弾くフォアハンドは、すぐさま世界の舞台でも通用すると感じられるほど、日本人選手としては規格外のそれだった。

第1セットをパワーで圧倒した石井さやか 写真:伊藤功巳

第2セットも、第3ゲームで先にサービスをブレークしたのは石井だったが、齋藤が持ち味を出してきた。「取りたいと思うと上体が引けたり、弱気になってしまうで、次のゲームの入りを良くするために、今できることをやろうと思って戦った」と、足を動かし、ベースラインから下がらず打ち合うことで、すぐにブレークバックを果たしイーブンへ戻す。

第2セットは齋藤咲良が反撃をみせる 写真:伊藤功巳

「たぶん足が動いていなくて…、あと、サラちゃんがギアを上げてきた」という展開に、石井は第6ゲームでブレークを許す。少ないチャンスを確実にものにした齋藤が、第2セットを取り返した。

第3セットはブレークを一つリードし、4−2とした齋藤に勢いがあった。石井は次のゲームでブレークポイントを握られる窮地もあったが、「集中して、目の前のポイントを取ることを意識した」という石井が、次第に序盤の集中力を取り戻し、強気のラリーを展開し、4ゲーム連取で試合を制した。

強気のテニスを貫いた石井が初優勝 写真:伊藤功巳

「できることをやって、全力で戦った」を清々しい笑顔を見せる石井。「いろんな選手がここを登竜門にしているすごい大きい大会。ここで優勝できて素直に嬉しいし、自信がついた」とビッグタイトルの獲得に、今後の成長を期待させた。

敗退した齋藤も「試合前から緊張していたし、いつもの大会とはちょっと違う心境でプレーした。(全日本は)やっぱり特別だなと実感した」と、次回のタイトル獲得へ意欲をみせた。

今大会で引退の伊藤竜馬が快進撃!

男子シングルス準々決勝は、第1シードの白石光が、第5シードの田口涼太郎に敗れ、第2シードの松田龍樹が伊藤竜馬に敗れ、スーパーシードで3回戦から戦った2人が、姿を消した。第3シードの磯村志、第4シードの今村昌倫は順当に勝ち上がり、準決勝は、田口対今村、磯村対伊藤の対戦となる。

最後の全日本を全力で楽しむ伊藤竜馬 写真:伊藤功巳

今大会で引退を決めている伊藤は、「久しぶりにフォアハンドがいい感覚だった」と松田を圧倒した試合の出来に笑顔を見せる。前日の住澤大輔戦では3時間弱のロングマッチを演じ、大きな疲労を感じているのかと思いきや「リラックスして戦えているので、意外と大丈夫」だという。

今大会を含め、最近は常に若手の挑戦を受けている伊藤だが、戦ってきた選手に対して「ここ2年くらい僕もITF大会を回ってみて、どちらかというと現状維持という感じの子が多い。色々なポテンシャルがあるけどうまく引き出せていない。若い子はもう少し”上に行ってやるぞ”というハングリーさをもっと出してもいいのかな…。じゃないとおじさん勝っちゃうよ(笑)」と、ジョークを交えて、現状を懸念する。

ファーストサーブからスライスをかける、ラリーでもスライスや高いスピンを混ぜて相手の打点を狂わせる。時にはサーブ&ボレーでプレッシャーをかけるなど、今大会の伊藤のプレーはまさにベテランの醍醐味だ。

「明日戦う磯村くんは、すごいファイターですし、戦うのが楽しみ」と翌日への期待を寄せる。負けたら引退という状況で今大会に身を置く伊藤は、全力で「全日本」を楽しんでいる。

【三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権 99th 10月11日の結果】

■女子シングルス決勝
[3]石井さやか(ユニバレオ)6-2 3-6 6-4 齋藤咲良(富士薬品) [1]

■女子ダブルス準決勝
林恵里奈(セーレン)/森崎可南子(橋本総業ホールディングス)5-7 6-2 [10-8] 今村咲(EMシステムズ)/阿部宏美(EMシステムズ)[2]

■男子シングルス準々決勝
田口涼太郎(Team REC) [5] 6-3 7-5 白石光(SBC メディカルグループ) [1]
今村昌倫(JCRファーマ)[4] 6-2 6-2 熊坂拓哉[6]
磯村志(やすいそ庭球部) [3] 4-6 6-4 6-4 片山翔(伊予銀行) [8]
伊藤竜馬(興洋海運) 6-4 6-3 松田龍樹 (ノア・インドアステージ)[2]

■男子ダブルス準決勝
柚木武/渡邉聖太(イカイ/橋本総業ホールディングス)[1] 6-3 3-6 [10-8] 今村昌倫/市川泰誠(JCRファーマ/ノア・インドアステージ)[3]
上杉海斗/野口政勝(江崎グリコ/ONE DROP) 7-6(4) 7-6(4) 中川舜祐/楠原悠介(伊予銀行) [4]

【10月12日の試合予定】12時スタート/有明コロシアム
第1試合 田口涼太郎(Team REC) [5] vs 今村昌倫(JCRファーマ)[4]
第2試合 磯村志(やすいそ庭球部) [3] vs伊藤竜馬(興洋海運)
第3試合 柚木武/渡邉聖太(イカイ/橋本総業ホールディングス)vs 上杉海斗/野口政勝(江崎グリコ/ONE DROP)

記事/Tennis,jp 写真/伊藤功巳