日本最高峰のタイトルを目指して選手たちが戦う「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権 99th」(本戦10月4日〜13日、東京・有明コロシアム)。10月11日は女子ダブルス決勝がセンターコートで11時から行われた。
決勝は第2シードの今村咲/阿部宏美組と、準決勝で第1シードを倒したノーシードの林恵里奈/森崎可南子組となった。ノーシードとはいえ、林は2018年全日本ダブルスタイトル保持者で、森崎は2017年と2019年でダブルスを制している経験豊富なペアだ。
森崎のサービスは安定しており順調にキープ。リターンでは強気でストレートをどんどん狙っていった。林は前衛の動きが良く絶妙なコースに配球するスタイルで、森崎が後衛、林が前衛の形が最も安定している。今村と阿部のペアも今村が力強いストロークで押し、阿部がネットで動く形が機能していた。
林/森崎ペアは第1セットで3-5とリードされるが、「積極的に攻めるのが武器。自分たちからポイントを取りに行こう」と声を掛け合い、5-5に追いつく。しかし、林のサービスゲームで6度デュースが繰り返された末にブレークされると、そのまま5-7でセットを落とした。
「取り切れなかったけれど、まだ負けたわけではない」と2人で気持ちを切り替えて、やることを整理して第2セットに臨んだ。決まっても決まらなくても、リターンはストレートを頻繁に狙い、コースチェンジを積極的に仕掛けていく。今までブレークされていた林のサービスゲームでは、厳しいコースにサービスが入るようになりキープに成功。相手ペアの精度が少し落ちたこともあり、6-2で取って10ポイントタイブレークへ。
自分たちから仕掛ける手を緩めず、リードを保ち続けた林/森崎ペア。森崎のサービスから林がボレーで決める理想的な形でマッチポイントを握ると、相手のサービスを林がストレートにリターンエースを決めて、ノーシードから頂点に立った。
チャンピオンズスピーチでは、2人ともが「苦しい時期を乗り越えて」優勝したことを喜び、森崎は「3回目の優勝ですが今回が1番うれしいです」と涙を見せた。
28歳の森崎にとって苦しい時期とは、「学生とプロの違いに直面して自信をなくしている時でも、プロなので勝たなくてはいけないプレッシャーに押しつぶされていた」状態の時で、テニス人生で初めて「辞めてもいいかもしれないと思った」と言う。変化があったのは約1年前。牟田口恵美コーチと出会ったことで、この1年をかけて立て直すことができたのだ。
30歳の林にとっての苦しい時期は「ケガが続いてリハビリ期間が長く、試合に出たいけれど身体がもたない。気持ちと身体がマッチしていない」という状況が続いたことだ。「今も100%ではないけれど、優勝を勝ち取れたのは、苦しい期間に練習やトレーニングを頑張ってきたから」だと感じている。その時期にも一緒に組んでいた森崎は、「恵里奈ちゃんとの優勝は本当にうれしい」と、仲良しペアは2人で喜びを噛みしめた。
■女子ダブルス決勝結果
〇林恵里奈(セーレン)/森崎可南子(橋本総業ホールディングス)5-7 6-2 10-8 ●今村咲(EMシステムズ)/阿部宏美(EMシステムズ)[2]
記事/Tennis,jp 写真/伊藤功已