WTA500「東レ パン パシフィック オープンテニス 2024」が、有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コートにて10月21日~10月27日(本戦)に開催された。27日にはシングルスとダブルスの決勝が行われた。

第1シードでパリ五輪金メダリストのジェン・チンウェン(中国)が順当に決勝まで勝ち進み、ワイルドカードで出場している155位のS・ケニン(アメリカ)と対戦し、ジェンが 7-6(5) 6-3で勝利を収めた。

色々な球種を駆使して相手を動かしたケニン。写真:伊藤功已

ケニンは準決勝で内転筋を痛め、ダブルス準決勝を途中棄権している。そのケガの具合が懸念されたが、テーピングはしているものの、それほど動きに不自然さはない。試合序盤には、2度雨で中断する場面があったが、2-2の後には屋根を閉めて再開することになった。

ケニンは相手を左右に振る展開の早さと、絶妙なドロップショットも披露して相手を走らせた。ジェンは何度もブレークポイントをつかむものの、それを取り切れない。ジェンのサービスは好調でサービスゲームを不安げなくキープしていき、タイブレークへ。どちらが取ってもおかしくない展開だったが、ジェンが1度目のセットポイントで第1セットを制した。

ジェンは16本のサービスエースを奪った。写真:伊藤功已

第1セットのジェンのファーストサービスが入った時のポイント獲得率はなんと100%。コースが良いワイドサービスと、スピードのあるセンターへのサービスが、リターンを難しくさせているようだった。

第2セットに入ると、ジェンのショットの威力はさらに増し、リターンも深くに入るようになり、2ゲーム目を初めてブレークする。これがこの試合唯一のブレークとなった。その後は、ジェンのサービスが冴え、ケニンも諦めずに善戦し、見ごたえのラリーが披露された。多くの声援が飛ぶ中、充実した内容の決勝戦はジェンの東レPPO初優勝で幕を閉じた。

WTA500初優勝のジェン(右)、トップ100返り咲きがほぼ確定した準優勝のケニン。写真:伊藤功已

「(準優勝した)22年は後悔することもあったので、今年は優勝に届いてうれしいです。初めてのWTA500の優勝は大きい」と、意外にもWTA250のタイトルしか持っていなかったジェン。同時に自分のプレーを取り戻せた喜びもあるようで、「十分に準備の時間が取れて東京で素晴らしいパフォーマンスが出せて、試合の中でリズムを取り戻せたと思います。今週、自信を深められました」。

ジェンにとって今年はブレークの年だった。「全豪オープンの決勝に行って、それ以降はアップダウンが激しい1年でした。金メダルは忘れられない思い出です。WTA1000で決勝に進み、WTA500で優勝できて、やはり優勝はいいなと思いました」と振り返った。今後は、WTA1000やグランドスラムでも、彼女が頂点に立つ姿を見られるかもしれない。

準優勝となったケニンも、「今週は充実した週を過ごせました。来シーズンを良い形で迎えるためにも、トップ100に入って今季を終えることができれば、良いシーズンだったと思えます」。今回の準優勝という結果で、トップ100に返り咲きはほぼ確定している。彼女にとって重要な大会となったことは間違いない。

日本人ペアが貫いた、引かない姿勢

2人でポジティブに戦い続けた青山/穂積組。写真:伊藤功已

ダブルスは、今年の8月からペアを組んでいる青山修子/穂積絵莉組が、柴原瑛菜/L・シゲムンド組に、6-4 7-6(3)で勝利して、2人とも今季初優勝、ペアとしてはツアー初優勝を果たした。

青山と柴原は以前ペアを組んで結果を出していたこともあり、お互いのプレーはよくわかっている。柴原のパワフルなプレーに対して「引いたらシゲムンドに決められるので、打たれたら打ち返す。1本でも多く相手のショットにくらいついて、しのいだらこっちが先に前で動く」ということを意識していたという青山。

柴原がチャンスを作り、シゲムンドが決める形が機能していた。写真:伊藤功已

柴原もそれは感じていたようで、「(相手ペアは)ミスが少なく、コートカバーが良くて、いつもより1本多く戻ってきたし、青山さんのネットプレーはいつもプレッシャーを感じた」と言う。

そして、穂積は「自分たちでポイントをつかみにいく、どんな時でも引かない」という気持ちでいたことが結果に結びついたと考えている。第1セットは2-4とリードされたところから逆転し、第2セットのタイブレークを常にリードして進められたのは、その気持ちの持ちようだったのかもしれない。

昨年は準優勝で悔しい思いをした穂積は、「今年は良い試合をしても勝ち切れないことが多かったので、1大会を通して2人でポジティブに戦い優勝という結果がついてきてうれしいです」と喜んだ。青山は「この優勝をきっかけに自分らしいプレーを続けられればいいと思います」と、結果だけでなくプレーに手応えを感じた様子。青山/穂積組は、11月に開催される女子国別対抗戦のBJK杯ファイナルに日本代表として参加する予定。この優勝で自信を手に入れたペアは、BJK杯でも活躍してくれそうだ。

1回戦から苦しい戦いを勝ち抜き優勝を果たした青山修子/穂積絵莉組。写真:伊藤功已

-10月27日(日)の結果-
■シングルス決勝■
〇ジェン・チンウェン(中国)[1] 7-6(5) 6-3 ●S・ケニン(アメリカ)[WC]
■ダブルス決勝■
〇青山修子/穂積絵莉(日本)6-4 7-6(3) ●柴原瑛菜/L・シゲムンド(日本/ドイツ)

取材・文:Tennis.jp 写真:伊藤功已