100回目という節目の大会を迎えた「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権100th Supported by 橋本総業ホールディングス」(本戦10月5日~12日)。日本最高峰のタイトルをかけ、選手たちが頂上を目指す。10月10日は女子シングルス準決勝、男子シングルスと男女ダブルス準々決勝の計10試合が行われた。

清水綾乃が仲良し対決を制して2度目の決勝へ

2018年優勝者の清水綾乃。写真/鯉沼宣之

女子シングルスの準決勝は、清水綾乃と小堀桃子という、同い年でダブルスでもよくペアを組んでいる仲良し同士の対戦となり、清水が6-0 6-4のストレートで勝利した。

2人の今年の対戦成績は1勝1敗。清水は「(小堀は)どんどん打ってくるだろうな」と警戒しており、「弱気になったら攻め込まれるから引かずに、行けるボールはどんどん攻撃して真っ向勝負でいこう」と決めていた。

小堀桃子 写真/鯉沼宣之

その姿勢がプレーにも表れて相手に1ゲームも許さずに第1セットを取る。第2セットに入り小堀が早いタイミングで展開してきてリードを奪われる。しかし、小堀のサービスの確率が悪くリズムをつかみ切れない間に、清水が逆転。6-0、6-4で決勝戦に駒を進めた。

清水は2018年に全日本のタイトルを取っており、今回は7年ぶりの出場。今までは裏で出場したいITFの大会があり、そちらを優先していた。今年はそういう大会がなかったこと、今年の5月からチームに加わった元世界24位の神尾米さん率いる「Team Rise」のメンバーの多くが出場することもあり、締め切り1週間ぐらい前に出場を決めたという。

すでに優勝しているだけに、コロシアムの試合でも「思ったより緊張せず楽しめたので、決勝もこの精神状態のまま入れたらベスト」とプレッシャーを感じずにプレーできているようだ。しかし、決勝となれば違うことは理解している。「1度経験しているので、(決勝は)緊張するものだと思って入ろうと思っています」。

対戦相手について聞くと、「(岡村)恭香ちゃんは、攻撃力もあるし、1球1球の質が高い」と考えている。経験をプラスにして、明日の決勝に臨む。

岡村が全試合フルセットを乗り越えて初の決勝進出

第2シードの岡村恭香。写真/鯉沼宣之

もう1つの女子準決勝は、第2シードの岡村恭香と第4シードの細木のシード対決。清水が言うように、1球1球しっかりと打っていく岡村に対し、両方両手打ちの細木は低い軌道で安定して返球していく。岡村が攻撃力で上回れるか、ミスをしてしまうかが勝負の分かれ目になっていた。

岡村は「低いボールに対して自分も低く処理してしまうだけだと、相手の得意な土俵でしかやりあえない」と、相手のプレーに付き合わないことを心掛けた。第1セットはラリーになっても自分の持ち味を出せて6-4と奪取する。

細木咲良。写真/鯉沼宣之

しかし、1回戦から全てフルセットの試合を戦っている岡村の身体は疲労が蓄積していた。第2セット1-3とリードされたところでトレーナーを呼び、右足のケアをしてもらう。「足が気になり始めた」岡村は第2セットを3-6で落とす。

「痛みが出たことはどうしようもない事実。最後まで戦い抜きたかったので、中途半端なプレーはしなくない。自分にできるプレーをやり続けるしかない」と気持ちを切り替えられて、ファイナルセットを6-1で取り、決勝進出を決めた。

岡村にとって全日本選手権は4年ぶりの出場となる。今回出場を決めた要因を「まだタイトルを取っていないので、100回目という節目の大会には出たいと考えていたタイミングで、所属先の橋本総業ホールディングスさんがスポンサーをすると聞いたり、兄がこの大会を最後に引退すると聞きました。普段は(この時期は)国際大会を戦っていますが、今回は出場してタイトルを狙って戦ういい機会なのかなと思って出場を決めました」と言う。

「全日本選手権は何か特別なものがあって本当に難しい」と言う岡村の過去6度の大会最高成績は3回戦進出。今回も毎回フルセットにもつれ、「1回戦負けしてもおかしくなかった」状況の中、決勝まで勝ち進んでいる。それが岡村の成長だろう。「苦しみながらもベストを尽くすというのが何とかできているのかなと思っていて、ここまで試行錯誤して戦ってきた経験がこの大会でようやく出せているのかなと思います」。明日は、30歳の岡村が100回記念の大会で、全日本初タイトルを狙う。

女子決勝は岡村対清水というカードに決定した。この2人は現在、「Team Rise」のチームメイト。今日は神尾米さんと比嘉ジャイミー幸男さんがコーチ席に座っていたが、明日は比嘉ジャイミーさんが大阪の「木下グループジャパンオープン」帯同のため不在となる。2人いれば、それぞれのサイドに付くことも可能だったが、明日は神尾さん1人のためどちらのサイドにも座らず2人を見守ることになるようだ。

岡村は、「細かい策なんてなくて、ガチンコでやりあえればいいなと思っています。決勝戦で同じチームで戦えるなんて、これ以上素晴らしいことはありません」と言い、明日の決勝を「発表会」という言葉で表現した。今まで学んだことを存分に発揮できる発表会の舞台となることを期待しよう。

【10月10日の結果】
■女子シングルス準決勝
〇[5]清水綾乃(Team LB) 6-0 6-4 ●小堀桃子(橋本総業ホールディングス)
〇[2]岡村恭香(橋本総業ホールディングス) 6-4 3-6 6-1 ●細木咲良(原商) [4]

■女子ダブルス準々決勝
〇[1]小堀桃子/山﨑郁美 (橋本総業ホールディングス/島津製作所) 7-6(3) 7-6(11) ●佐藤光/佐藤南帆(フリー/三田興産)
〇山口花音/田邑来未 (関西大学/早稲田大学) 6-4 6-1 ●今村咲/森崎可南子(EMシステムズ/橋本総業ホールディングス)[3]

■男子シングルス準々決勝
〇[1]磯村志(やすいそ庭球部) 7-5 5-7 6-1 ●中川舜祐(伊予銀行)
〇[8]田口涼太郎(Team REC) 6-3 6-4 ●松田龍樹(ノア・インドアステージ) [3]
〇市川泰誠(ノア・インドアステージ) 4-6 6-3 6-4 ●本田尚也(サトウGTC)
〇山﨑純平(ONE DROP) 6-4 6-4 ●熊坂拓哉(イカイ) [5]

■男子ダブルス準々決勝
〇[4]田口涼太郎/野口政勝 (Team REC/ONE DROP) 6-4 6-4 ●河野優平/片山翔(伊予銀行)
〇本田尚也/松岡隼(サトウGTC/三菱電機エンジニアリング) 6-2 6-2 ●市川泰誠/松田龍樹(ノア・インドアステージ) [2]

取材・文/赤松恵珠子 写真/鯉沼宣之