16歳以下日本代表である田島尚輝は、全日本ジュニアのドローを見た時にこう思ったと言う。「第1シードをもらったので負ける訳にはいかない。4年ぶりに全日本のタイトルを穫りたい。」
田島は、世代トップ選手ではあるが、これまですべてのタイトルを総なめにして来たわけではない。調子の波はあり、そして負けるたびにさらなる努力を重ねて着実に一歩ずつ強くなって来た選手である。
5月の全仏ジュニアWC世界大会、7月の全英ジュニア(ウィンブルドン)予選も戦い、さらに経験値を上げて全日本に臨んだ。今回の全日本ジュニアでは18歳以下にチャレンジすることも考えたようだが、しっかりと16歳以下で戦う事を選んだのもあり、大会前には少しプレッシャーを感じていたと言う。
そのせいもあったのか、大会中も緊張感の中で調子はなかなか上がらなかったようだ。そんな状態の中、スコア的には完勝でベスト4までは勝ち上がり、準決勝の阿多戦も本来の調子ではないながらも、ここぞという場面では多彩なショットを駆使して相手の攻撃力をかわしてストレート勝利。決勝の舞台までたどり着いた。
決勝戦の始まる前には、「勝ちにもこだわりたいが、自分のプレースタイルは崩さず、気持ちでは絶対に負けないようにしよう」と思っていたようだ。
ファーストセットは、予期していた通り動きが固く、相手の市川の勢いそのままに押し切られ、3-6でこのセットを奪われてしまった。しかし、ここから田島が巻き返し始める。セット間に状況を分析、「相手の調子もいつかは落ちてくる。打ち合うのは不利なので、体力勝負、相手をじっくりと動かして行こう」と戦略を変更。
見事にこれが成功する。内容は競りながらも、徐々に相手の体力と集中力が削がれはじめ、逆に丁寧にボールを見て長いラリーをしながら、機を見てコート内に攻め込む。先にネットを取る場面も増えて行く。
こうなると勢いは完全に逆転し、ファイナルセットは内容も完勝だった。また試合を通じて、随所で劣勢をはねのける200km越えのサーブ力も光った。スコアは3-6、6-2、6-2。4年ぶりの戴冠にふうっと大きな息を吐き出した田島。第1シードの重圧からほんの少し開放された瞬間だった。
その1時間半後にはダブルスの決勝が始まる。ジュニアデビスカップ代表である川上とのペア。第1シード。こちらは相手の阿多・丸山組の勢いをガッチリと受け止め、セカンドセットは劣勢を追いつきストレートで勝利。2冠を達成した。
田島は数日後には、USオープンジュニアとその前哨戦である、カナダのグレード1大会へと出発する。今後の目標としては、まずはグランドスラムジュニアでベスト4に入る事、そして少しでも早くフューチャーズやチャレンジャー大会へ挑戦していくことのようだ。活躍に期待したい。
記事:長嶋秀和