8月31日、USオープン4日目

奈良くるみ(安藤証券)がUSオープンそしてフレンチ・オープンにも優勝したことのあるクズネツォワ(ロシア)を6-3、3-6、6-3で破った。
クズネッオワは8位だがこのUSオープンの成績次第ではNo.1になる可能性も持っていた選手だ。

3回戦では、2回戦で日比野菜緒を下したL・サファロバ、全仏準優勝者と対戦する。
「サファロバにはフレンチでボコボコにやられている。じっくりロングラリーにもっていけばチャンスはあると思う。」と奈良。

日比野菜緒(ルルルン)は2015年全仏準優勝のL・サファロバ(チェコ)に1-6,6-3,2-6とフルセットの末敗れた。
尾崎里紗(江崎グリコ)も張帥(中国)に0-6,3-6とストレートで完敗した。

奈良くるみvsクズネツォワ 2回戦

――彼女のファイトは凄かった。
155センチ、小柄な奈良くるみが175センチの身長、二回りぐらいしっかりした体格のクズネッオワに挑む。

ファイナル・セット、奈良は第1ゲームで先にブレークを許したが、直ぐにブレーク・バック。
粘り強いストロークでポイントを重ね5-2とリードする。

勝ちが見えた“その瞬間”、特に上位の選手に“勝てるかも”と思った瞬間、人は勝ちビビリするものだ。奈良にもそんなショットがあった。

奈良のサーブ5-3、30-30、奈良はネットにつき、ボレーをサイドラインギリギリに落とす。クズネッオワは必死に拾い、ロブをあげた。高く上がったロブ、奈良にとってはイージに見えるスマッシュを大事な時にミスヒットしてしまう。
40-30とマッチポイントを握るのではなくブレーク・ポイントを与えてしまった。

クズネッオワは奈良の“その瞬間”を見逃さない。
しぶとくプレーし粘り、さらにプレッシャーをかける。

奈良はビビリながらも、それに耐え体全体でボールを打ち込み、デュースに。
そしてマッチポイントがきた。

粘っこいラリー戦が続く、奈良はコートの中に入り、思い切りフォアでクロスに打った。右手をのばし追うクズネッオワだったが体勢が取れずに返球されたボールはロングになる。

初めてトップ10を破った奈良くるみ。(これが9度目の対戦)
勇気を持った闘いは見ている多くの人に感動を与えただろう。

一所懸命、奈良くるみの強みだ

≪奈良くるみインタビュー≫

――「今まで通りのプレーを心掛けた」。

試合後さらっと言った彼女だが、これが一番難しい。
身長155cmの奈良くるみは、期待やプレッシャー、様々な葛藤の中で見事トップ10の選手を破り、2回戦突破をやり遂げたのだ。

「トップ選手に勝つには何か仕掛けないといけないと思っていた。昨日のプレーが良かったのでそれを行きすぎないように、あまり攻め急がないように落ち着いてできた。USオープンでは勝つという希望をもってやってきたので、いい結果を大舞台で出すことができてめちゃくちゃ嬉しい!」

ファイナルセットについて。
「5-2になっても勝てるとは思わなかった。どうせ5-4になるだろうと思っていた。だから勝ちを意識せず、“3ゲームリードしているんだから”と自分に言い聞かせた。緊張はしたけど最後はどうやってポイントを取ったか?覚えていない。」

諦めずに必死に自分のプレーをしようとした奈良。覚えていないのはそのくらい集中していたからだろう。
その瞬間は観客の声も拍手も聞こえない、クズネッオワとの一対一の空間だったかもしれない。

「最初から最後までやり続けられることをやった。スマッシュをふかした時もネガティブにならずにその後も持ち直せた。
それは毎日、コーチとトレーナーからの、これをやれば上がれるという言葉を信じてやってきたから。アメリカシーズンを一緒に戦ってきたから。
勝てなくても勝つための練習をして、頑張れってきたから。」

奈良くるみと一緒に世界を転戦している原田夏希ツアーコーチは、「信念を持って勇気あるプレーをやりきりました。本当に良く頑張りました。」と言った。

奈良は「毎日努力をするのを楽しみにしている」と力強い言葉を残した。

奈良くるみVSサファロバ 3回戦を読む
大会データー:2017USオープン
優勝賞金(男女同額):$3,700,000(約4億円)
準優勝:$1,825,000(約2億円)
4強:$920,000
8強:$470,000
4回戦:$253,625
3回戦:$144,000
2回戦:$86,000
1回戦:$50,000
本戦8/28-9/10,2017
会場:USTA Billie Jean King ナショナルテニスセンター
NY現地時刻(時差-13時間)
オーダー・オブ・プレー
ライブスコア

<<男子2回戦>>
〇1]R.Nadal(ESP) 46 63 62 62 ●ダニエル太郎
〇L]L.Mayer(ARG) 67(3) 64 63 64 ●杉田祐一

<<男子1回戦>>
〇杉田祐一 62 62 60 ●G.Blancaneaux(FRA)
〇ダニエル太郎 61 46 46 62 62 ●T.Paul(USA)
男子本戦ドローPDF

<<女子3回戦>>
大坂なおみ vs Q]K.Kanepi(EST,最高ランキング15位,32歳)
奈良くるみ vs L.Safarova(CZE,最高ランキング5位,30歳)

<<女子2回戦>>
〇大坂なおみ 63 46 75 ●D.Allertova(CZE)
〇奈良くるみ 63 36 63 ●8]S.Kuznetsova(RUS)
〇L.Safarova(CZE) 61 36 62 ●日比野菜緒
〇27]張帥(CHN) 60 63 ●尾崎里紗

<<女子1回戦>>
〇大坂なおみ 63 61 ●A.Kerber(GER)
〇日比野菜緒 63 46 75 ●C.Bellis(USA)
〇尾崎里紗 63 67(5) 76(5) ●Q]D.Lao(USA)
〇奈良くるみ 61 62 ●Sorr Tormo(ESP)
〇23]B.Strycova(CZE) 61 63 ●土居美咲
〇K.Pliskova(CZE) 62 62 ●江口実沙
女子本戦ドローPDF
穂積絵莉/加藤未唯組、二宮真琴、土居美咲、青山修子、大坂なおみダブルス出場。
女子ダブルスドロー

予選には男子が添田豪、伊藤竜馬、内山靖崇、守屋宏紀、
女子は穂積絵莉、加藤未唯、日比万葉、澤柳璃子、波形純理が挑戦したが。
男子予選ドロー
女子予選ドロー
USオープンドロー

記事:塚越亘 塚越景子 森下泰 西谷明美 写真佐藤ひろし/TennisJapan

怖れることなく勇気を持って闘い抜いた奈良