9月7日 有明コロシアムのセンターコート。

清潔感のある白いスーツで現れた彼女は、まっすぐ姿勢を正し、「皆さんこんにちは。伊達公子、2度目の引退会見です」と言った。

46歳、彼女の長いテニス人生が来週この有明で幕を閉じようとしている。

(引退に向けて今の心境は?)

――「プロテニスプレーヤーとしての時間が1日1日少なくなってきているなと、心の中でカウントダウンをしています。しかし今は“引退”のことより、来週始まる試合に向けて、自分のやるべき事、やらなければいけない事を最優先すべきだと思っています」。

(なぜ引退を考えたのですか?)

――「昨年9月に膝を痛めました。その後リハビリをしましたが、万全ではなかった、思うように体も動かなかったです。でも“引退”は考えていなくて。それでも時間をかければ必ずうまくいくと思っていました」。

「グランドスラムにもう一度…!!」と強く思っていたという伊達。彼女に“引退”という言葉を過ぎらせたのは、彼女の意思ではなく、彼女自身の身体だった。

今年7月、アメリカのツアーで3週間プレーをして戻ってきた後、膝と肩の痛みは限界になっていた。ドクターとの話し合いを自分の中で整理して、「ああ、少しずつ(引退を)決断しなけらばいけないな」と思ったと言う。

そして8月27日、自身のブログで「決断」というタイトルで引退を発表したのだ。
迎えたこの現役引退発表会見は1時間という時間の中で、数秒も質疑応答が途切れることはなかった。

(9年半、何が原動力となってプロ生活を続けられたのですか?)

――「テニスが好き。スポーツが好きだから」。

一瞬ペンを止め、顔をみた。そういった彼女の顔はいつものあの笑顔だった。

錦織からサプライズの手紙

伊達さん、お疲れ様でした。
今まで僕は伊達さんからたくさんの刺激をもらいました。
多くの後輩たちもみんな刺激をもらって、切磋琢磨できていたと思います。これからの人生を楽しんで、伊達さんらしく生きてください。
これからも宜しくお願い致します。
錦織圭

今日の為に用意した錦織からのサプライズ。

伊達「彼も怪我で苦しんでいる時期ですけど…本当に厳しい世界、あの身長と体格なら怪我と向き合うことになるのはしょうがなく思う。本来ならトップ50でも厳しいのに、トップ10で居続けることは本当にすごい。
厳しさ、難しさ、これからも色んな壁があると思うけど、身体第一で、もう一度しっかり怪我を治して、もう一度強さを発揮してほしいです。」

伊達公子、来週のこの有明でどんなプレーを見せてくれるのか。
最後はまた、彼女の笑顔が見たいとファンは思うだろう。

記事:塚越景子 写真:鯉沼宣之

≪伊達公子プロフィール≫ 1970年9月28日生まれ
ファーストキャリア(1989年~1996年)
94年全豪、95年全仏、96年ウィンブルドンで4強。4大大会の日本女子歴代最高成績を残す。
95年11月13日世界ランク4位、日本人最高位に。
96年11月WTAチャンピオンシップ準々決勝ヒンギス戦を最後に26歳で引退。

セカンドキャリア(2008年~2017年)
約12年後、08年、38歳で全日本優勝し「チャレンジ」を始める。
09年全豪で96年全米以来のグランドスラム本戦に復帰。
09年秋38歳11ヶ月30日でWTAツアー韓国オープン優勝。 (キング夫人の39歳7ケ月23日に次ぎ2位)
2013年42歳で記録した全豪とウィンブルドン3回戦進出は、オープン化以降女子最年長記録。
伊達公子WTAデーター
ツアー優勝回数:8回
ツアー成績:450勝268敗
ツアー獲得賞金額:$3,988,378
伊達公子ITFデーター
もともとは左利きだったが、皆右手にラケットを握っていたので右手に持って始めた。
2004年ロンドンマラソン(ラオスに学校をという基金のために走る)3時間30分でゴール
伊達公子公式ブログ 決断