9月24日(日)、日本で開始される女子テニス大会の最高峰に位置づけられている、東レ・パン パシフィック オープンテニストーナメント2017。
シングルス決勝が行われC・ウォズニアッキ(デンマーク)がA・パブリュチェンコワ(ロシア)を6-0,7-5で破り2年連続3度目の優勝をした。
元世界No.1のウォズニアッキは今季初、通算26回目の優勝を果した。
全米オープン終了と同時に有明テニスの森で開催される『ジャパンウィメンズオープン』(JWO)と『東レPPOテニス』(東レPPO)は、テニス界の季節が夏の北米から“秋のアジア・シリーズ”に移ったことを告げる大会。だが同時に、2週間前まで開催されていた全米オープンからの流れを、色濃く感じさせる2大会でもあった。
2週間にわたって有明で行われた日本女子テニス物語
(内田暁)
46歳の伊達公子の“セカンドキャリア”最後の試合が屋外の1番コートで行われたのとほぼ同時期、有明コロシアムでは、22歳の日比野菜緒と加藤未唯による“同期・同門対決”が行われていた。
日比野と加藤はいずれも、兵庫県の“テニスラボ”に拠点を構える盟友。シングルスでの実績やランキングでは日比野が大きく上を行くが、今回の直接対決では、加藤が完勝を収めた。
その試合中、日比野はネットを挟み対峙する友人にしてライバルの姿に、ある種の決意を感じていたという。
加藤は先の全米オープン予選決勝で惜敗し、あと一歩で本戦出場を逃している。
その悔いを踏まえた上での「加藤選手のコートでの立派な振る舞い」(日比野のブログより)が、今回の加藤の快進撃の原点にあった。
「自分の考えを表に出さない」「相手に良いプレーをされても、ブレずに自分のテニスを貫く」。
その決意が、加藤の持ち味である粘り強さと、多彩な技を操る創造性豊かなテニスの土台を構築する。
安定感を増したプレーで2~3回戦を突破すると、準決勝ではその上に激しい闘争心も上乗せして、決勝まで大躍進。
全米後に自らに立てた「新しい自分を見せる」との誓いを、日本のファンの前で見事果たした。
もう一つ、JWOの初戦で行われた日本人対決が、大坂なおみ対奈良くるみ。
こちらもランキングでは上位の大坂を、経験で上回る奈良が圧倒した。
大坂は先の全米初戦で前年優勝者のA・ケルバーを破る大金星を手にしたが、その時に覚えた「自分への期待」の重みから、まだ脱却しきれていない様子。
対する奈良は、全米の3回戦進出で覚えた「自分のテニス」と「日々の積み重ねで得た自信」を、しっかり東京にも持ち込んでいた。
ムーンボールを用いた緩急と、ドロップショットやネットプレーを絡めた「前のスペースを使うテニス」で大坂を揺さぶり技アリの勝利。
さらには翌週の東レPPOでも、奈良は自分のプレーを貫いた。
初戦で対戦したのは、奈良と似たタイプの選手であるプチンツェワ。小柄ながら走力と頭脳的な配球を武器とする両選手の対戦は、テニスコートがいかに広いか(それは平面だけでなく、上空も含めて)を見る者に教えてくれるようだった。
試合は、第1セットを失った奈良が持ち味の試合分析能力と調整力を発揮し、2セット目以降は相手に先んじて仕掛け逆転勝利。
勝った瞬間の派手な歓喜のガッツポーズは、「日本のお客さんの前で、凄く勝ちたかった」という熱い想いの表出だった。
また奈良は尾崎里紗と組んでのダブルスでも、東レ初戦で第1シードのチャン姉妹を破る大金星を手にしている。
「まさか勝てるとは思わなかった」と奈良が正直に告白すれば、
尾崎は「信じられない」と夢心地。
運命の10ポイントマッチタイブレークでは、試合終盤の自分のプレーを「まったく覚えていない」ほどの集中力で戦っていた。
お互いにシングルスプレーヤーなため「それぞれ半面でシングルスを戦う」(奈良)くらいの割り切り方で試合に入ったというが、それも二人ともにストロークやロブなど、基本の技術が高いが故に取れた作戦。
日々の取り組みとテニスの質そのものの向上が、ダブルスにも生きることを二人の勝利は証明した。
同時に今回の日本では、青山修子がJWOでダブルス優勝、二宮真琴がボラコワと組んでJWOと東レPPOで準決勝進出、穂積絵莉/加藤ペアは両大会でベスト8と、日本ダブルスの層が確実に厚くなっていることを多くの選手が示している。
伊達が去ったそのコートで、25歳の奈良がベテランの域に入るほどに若い日本女子勢が、今後のテニス界を担っていくとファンに強く訴えるかのような初秋の2大会であった。
記事:内田暁 塚越亘 塚越景子 写真 鯉沼宣之、伊藤功巳/TennisJapan
『東レPPOテニス』9/17-9/24
〇3]C.Wozniacki(DEN) 60 75 ●A.Pavlyuchenkova(RUS)
<<準決勝>>
〇3]C.Wozniacki(DEN) 62 60 ●1]G.Muguruza(ESP)
〇A.Pavlyuchenkova(RUS) 60 67(4) 64 ●7]A.Kerber(GER)
日本人プレーヤー成績
<<2回戦>>
〇9]C.Garcia(FRA) 61 63 ●奈良くるみ
<<1回戦>>
〇奈良くるみ 26 64 62 ●Y・プティンセバ(カザフスタン)
〇A・ケルバー(ドイツ) 63 64 ●大坂なおみ
〇S・ロジャーズ(アメリカ) 62 76(5) ●尾崎里紗
本戦ドロー
予選には14人の日本人プレーヤー達が挑戦した。加藤未唯はウーマンズオープンが台風18号で予定通り進行せず、WTAルールに則り出場取り消しをしなくてはいけなくなった。
予選ドロー
『ジャパンウィメンズオープンテニス』9/11-9/17
伊達公子最後の試合 予選突破の加藤未唯決勝進出の快挙
〇Q]Z.Diyas(KAZ) 62 75 ●Q]加藤未唯
<<準決勝>>
〇Q]加藤未唯 46 76(1) 64 ●Q]J.Fett(CRO)
<<準々決勝>>
〇Q]加藤未唯 61 63 ●A・クルニッチ(セルビア)
<<2回戦>>
〇Q]加藤未唯 75 63 ●4]K・プリスコバ(チェコ)
〇王薔(中国) 62 63 ●奈良くるみ
<<1回戦>>
〇A・クルニッチ(セルビア) 60 60 ●伊達公子
〇奈良くるみ 63 60 ●大坂なおみ
〇Q加藤未唯 63 64 ●日比野菜緒
〇Q]Z.Diyas(KAZ) 36 61 61 ●土居美咲
〇M・リネッテ(ポーランド) 61 75 ●尾崎里紗
〇韓馨蘊(中国) 75 62 ●江口実沙
シングルスドロー
加藤未唯予選突破。予選、日本人プレーヤーは11人が挑戦。
予選ドロー
青山、WTAツアーのダブルス優勝を8とした。
2014年はボラコバ(チェコ)と、昨年は二宮と組んで優勝、3度目のタイトル獲得。
準決勝では二宮真琴/R.Voracova(CZE)組を6-4,6-3で破る。
ダブルスドロー