全豪オープンの11日目(1月26日)のチケットを持っていた観客は幸運だ。男女の準決勝には、近年稀に見るレベルの超豪華なカードが出そろったからだ。


女子準決勝はいずれも現代を代表するパワーヒッター揃い。ビクトリア・アザレンカ(22歳、ベラルーシ)を除いて全員がグランドスラムタイトル経験者で元ナンバー1。さらに、キム・クライシュテルス(28歳、ベルギー)以外の3人は次週のナンバー1候補と、単に決勝進出を争うだけではない要素がてんこもりとなっている。
クライシュテルスとアザレンカは、パワフルなストロークが武器という選手同士。しかし、攻撃力は展開次第でほぼ互角だが、守備力、戦術、経験などほぼ全ての面でクライシュテルスが上を行く。アザレンカは先手を取ってクライシュテルスを振り回し、常に動かして打たせる展開を作りたい。逆に言えば、それができなければ相当苦しくなる。クライシュテルスは4回戦で左足首を傷めたが、準々決勝の様子を見る限りでは、大きな影響は感じられない。ただし、試合開始時間が午後1時30分以降と、最も暑くなる時間帯になるのがどんな影響を及ぼすか? 全豪にはエキストリーム・ヒート・ポリシーが存在し、一定レベル以上の暑さとなれば、屋根を閉めて空調を入れるルールはあるが、クライシュテルスが最も気にしているのはこの暑さ。約半年のブランクがある彼女にとって、今回の連戦も久々のこと。体力的にそろそろ辛くなる時期だけに、環境的な要因が心配される。
マリア・シャラポワ(24歳、ロシア)とペトラ・クビトバ(21歳、チェコ)は昨年ウィンブルドン決勝の再現。リベンジに燃えるシャラポワは「この対戦を楽しみしていた。同じ相手に何度も負けるわけにはいかない」とコメントするなど、闘志を露にしている。
両者ともにサービスとリターンが鍵。ロングラリーよりも3本目までにポイントを決しにくる早い展開を好む二人だけに、一瞬の間の取り合いの勝負となるだろう。少しのほころびが勝敗を左右する、そんな緊張感のある戦いが期待できそうだ。
さて、男子の準決勝だ。過去幾度もグランドスラムの決勝を戦い、両者のGSタイトルを合わせるとなんと26勝という21世紀初頭最高のライバル関係と言われるラファエル・ナダル(25歳、スペイン)対ロジャー・フェデラー(30歳、スイス)がここで激突する。
過去の対戦成績はナダルから17勝9敗だが、ハードコートに限って言えば、5勝4敗でフェデラーがリードする関係。全豪では2009年の決勝でナダルが勝って以来の対決となる。フェデラーは相手がまだナダルになるかトマーシュ・ベルディハ(26歳、チェコ)になるかわからなかった時点ですでに「できればラファと戦いたいね。全豪では決勝で戦って以来だから」とコメントするなど、ナダルとの対戦を楽しみにしている様子で、一方のナダルもまた「彼との試合はいつ、どんなラウンドだとしても特別だ」とし、「試合の最初から集中して、全力で戦う。いつもそうしているようにね。すごくタフで難しい試合になるだろうけど、トライするよ」と話している。この二人の対決には言葉は必要ない。それがたとえどんな試合、どんな結果であろうと伝説になるレベルの選手同士の戦いだ。絶対に見逃さないでほしい。