大会12日目の27日は、男子シングルスの準決勝と女子ダブルスの決勝がメイン。男子準決勝は現地時間で午後7時30分(日本時間午後5時30分)以降のスタートとなっているため、いわゆるナイトセッションとしての開催だ。


対戦するのは現世界ナンバー1にして、昨年のグランドスラム3冠、もちろん昨年の優勝者でもあるセルビアのノバク・ジョコビッチ(24歳)と、「4強」の一角と言われながらも、まだグランドスラムタイトルがないイギリスのアンディ・マリー(24歳)。昨年決勝のカードの再現だ。
両者の過去の対戦成績はジョコビッチの6勝4敗で、直近の対戦は昨年夏のATP1000シンシナティで、マリーが勝っているのだが、この時はジョコビッチの途中棄権による勝利だった。
両者ともに堅い守備をベースにしたカウンターパンチャー。さらに両者ともに現在のツアーで最高と言われるバックハンドを持っている。タイプ的には似たもの同士の対決だ。「イワン・レンドルがコーチに就いてからのマリーのプレーは良くなっている」とジョコビッチも警戒心を言葉にしているが、前年の全豪決勝でジョコビッチにストレートで敗れたマリーは「この1年の自分の成長ぶりを試したい。ジョコビッチとの試合を楽しみにしている」と話しており、お互いに自信を表に出している。
相手を罠にはめ、チャンスボールを誘いだしてカウンターを取るのがジョコビッチなら、マリーはコースを自分から変えて展開を作り、それでこじ開けた隙を突くのを得意としている。逆に言えば、お互いに得意の形に持ち込みたいなら、ジョコビッチはマリーに展開をコントロールさせず、先に仕掛けていく必要があり、マリーからすればジョコビッチの予測を狂わせるようなテニスが必要になる。
心配されるのは、準々決勝でジョコビッチが左足の太ももを傷めたような素振りを見せていたこと。機動力は彼の最大の武器なだけに状態次第では大きな不安要素になる。「どこにも問題はない」とジョコビッチは断言しているが、勝っている間に選手から出てくる調子や、フィジカルに関するコメントほど信用できないものもない。本当に悪いのか、影響がないのかは試合でのパフォーマンスだけが真実を語る。まずは序盤のジョコビッチの動きに注目が必要だろう。
 
マリーにとっての全豪は、2010年と11年の2年続けて準優勝に終わった舞台。悲願の優勝には、まずはナンバー1のジョコビッチを倒さなければならないが、マリーが今季から新たに迎えたコーチのイワン・レンドルは、数々の大舞台を経験してきたかつての王者。マリーにも様々な戦術を与えてコートに送り出すだろう。そして、マリーは様々な戦術を実行できる能力がある。ラケットでボールに触れさえすれば、自在に面を操作してコントロールできるのがマリーの持ち味。タッチのセンスということで言えば、フェデラーに匹敵、あるいはそれ以上の感覚を持っている選手だ。
戦術と駆け引き。そしてライン際での攻防。そこに妙味のある対戦が期待できそうだ。