ロンドンで開催中のAEGON選手権に出場した伊藤竜馬は、雨天順延のため2日間に渡って行われた初戦を突破したが、同日に行われた2回戦では、第8シードのジュリアン・ベネトーに7-5、4-6、5-7で敗れた。
安定したサーブを持ち、スライスなどを巧みに織り交ぜ相手の嫌なところをついてくる……そのような試合巧者のベネトーを相手に回しても、伊藤の攻撃性と、粘り強さを増した守備は崩れなかった。第1セットは、6本のエースを奪ったサーブがさえわたる。ファーストサーブ成功率も70%を記録し、サービスゲームで相手にプレッシャーをかけることができた。第11ゲームを4度のデュースに耐えてキープすると、次のゲームで即座にブレーク。キープ合戦のすえに、第1セットを奪い去った。
だが、第2セット以降、サーブの確率が徐々に下がり始める。「大切なところでファーストが入らなかった。自分のサービスゲームを簡単に取れないと、リターンゲームでもプレッシャーが掛けられず、メンタルも疲れてしまう」という精神面の余力が、勝負どころで明暗をわけた要因だろうか。第2、第3セットはいずれも終盤の競った場面で、ファーストが入らずブレークを許してしまった。
それでも試合後、伊藤の表情は明るい。その理由のひとつには、ベネトーのようなトップ30位の選手とも、互角の戦いをしたことがある。「ステパネクにも勝ったし、ベネトーのような相手にも勝てるチャンスはあった。ATPツアーはみんな自分より上の相手なので、むかっていける」という環境は、大物食いを狙う伊藤のメンタリティにもあっているのだろう。
そしてもうひとつの笑顔の理由は、オリンピック出場が決まったことだ。その件に話題を向けると、「いやー、嬉しいです!」と、日に焼け、精悍さを増した顔が、溶けそうなほどにほころんでいく。
「4年に1度のこの機会に、自分のピークが合わさったのは奇跡的なこと。日本のためにも、選ばれし戦士として勝利を奪いたい!」と表情をひきしめた後、「そうやって活躍して、テレビにもいっぱい映りたいですね」と、ふたたび笑顔を見せた。