ロンドン郊外で開催中のウィンブルドン選手権は28日に男女2回戦を行い、地元期待のアンディ・マリーはイボ・カロビッチを7-5、6-7、6-2、7-6で退けたが、昨年の準優勝者で第2シードのラファエル・ナダルが、100位のルーカス・ロソルに7-6、4-6、4-6、6-2、4-6で敗れる大波乱があった。
※写真は2回戦で敗れたラファエル・ナダル(左)と、大金星をあげたルーカス・ロソル(右)、クリックで拡大
まさかの伏兵だった。いや、大会前にこの伏兵の存在に気づけた人など居なかったろう。世界ランキングは100位で、ウィンブルドン本戦は初出場。それどころか、過去5年間のウィンブルドンへの挑戦は、全て予選の初戦敗退で終わっていたのである。前哨戦でも予選敗退していた26歳に、ナダルを正面切って倒す力が秘められていようなど、当の本人ですら信じられなかったはずだ。
だが、ロソルの長身から打ち下ろされる高速サーブとフラットの強打、そして「最初の3セットは良いプレーができなかった。リターンが良くなかった」というナダルの調子が合わさったとき、大会史に残るであろう番狂わせが発生する。ロソルの時速214キロのサーブがコーナーに決まったときは、ナダルですらまるで反応できなかった。ナダルの高く弾むショットを196センチのロソルがフラットでライン際に叩き込むと、あの鉄壁の守備を誇るナダルがボールの行方を見送った。第1セットこそナダルがタイブレークで競り勝ったものの、第2と第3セットはロソルの強打が次々と芝を抉る。ナダルの勝利を願うファンと、歴史的瞬間を目撃したいと望む観客の声援が激しくうねり、センターコートをゆるがした。
第4セットは、相手のサーブにタイミングがあってきたナダルが2度のブレークに成功し、ファイナルセットへ雪崩れ込む。これで、ナダルが勝利を引き寄せたと誰もが思ったそのとき、意外な存在が流れを断ち切った。それが、日没対策として屋根を閉め、照明を入れるため30~40分間の中断を挟むという、大会側の決断である。
「この屋根はできたばかりなのに、閉めるのに30分以上もかかると聞いて驚いたよ」
試合後「敗因については一切、言い訳はしない」と断じたナダルは、この大会の判断につきそう苦笑するにとどまった。だが結果としては、この30分の中断が運命を決する。再開後、屋根が閉まり風の影響を受けなくなったセンターコートで、ロソルのサーブはさらに精度と威力を増した。ロソルがこの日奪ったエースは22本だが、そのうち7本が第5セットで決めたものだ。
「第5セットのようなプレーをしたら、彼は誰にでも勝てるよ」。そうナダルが呆れたように言えば、ロソルは「ラファ(ナダル)には申し訳ないけれど、今日の僕はどこかからやってきた別人だった」と自分でも目を丸くする。
ナダルがグランドスラムの2回戦で敗れたのは、2005年のウィンブルドン以来。ビッグ4の一角が崩れたことで、今年のウィンブルドンは、いつもと異なる優勝戦線が展開されそうだ。