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実業団の団体戦「第39回テニス日本リーグ」の決勝トーナメントが、東京体育館で2月14日から16日にわたり開催された。2月16日には決勝戦と3位決定戦が行われた。
男子決勝には、全国に35校のテニススクールを運営している、ノアインドアステージが初めて進出し、2度の優勝を経験しているエキスパートパワーシズオカと対戦。0-2で敗れたものの大きなインパクトを残した。
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今回ノアインドアステージのシングルス2(S2)に抜擢されたのは、すでにプロ登録をしており、来月高校を卒業する富田悠太だ。日本ランキング188位の富田にとって、対戦相手の望月勇希は30位と格上の相手だ。だからこそ1ポイント目から気合い全開でプレーし、どんなボールにもがむしゃらに食らいつていった。
その全力投球のプレーは、チームを応援席を盛り上げた。吉備雄也監督も「先陣を切って高校生がファイトしてくれるのは、チームが躍動できた要因の1つ」と評価する。
格上相手に全力で立ち向かう気持ちは富田のプレーにも好影響をもたらし、重要なポイントでも積極的に攻める姿勢を崩さず第1セットを奪う。最後は10ポイントタイブレークで敗れたものの、上のレベルで戦うには「自分から攻めていかないといけない」と実感して実行できたことは、今後のテニスキャリアにおいて、大きなプラスとなるだろう。
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S1の松田龍樹も、ATP世界ランク315位の吳東霖(ウートゥングリン)という強敵に挑んだ。第1セットはウーの強力なサービスと巧みなネットプレーを崩せず落とす。第2セットに入り、リターンのポジションを下げてラリーに持ち込み、走って走ってボールを返し続けて相手のミスを引き出した。10ポイントタイブレークではマッチポイントを握った場面もあったが、勝利には至らず準優勝が決まった。
善戦するも勝ち切れずに悔しい思いは残るが、「S1はレベルが高く勝敗を左右する場面が回ってくるので、そこは意識して戦っていきたいです」と、エースとしての自覚が芽生えてきているようだ。
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初優勝は叶わなかったが、上位チームが外国人プレーヤーを擁している中、全員が日本人選手でアマチュア選手もいたことに注目したい。チームノアには、松田、ダブルスに出場した市川泰誠、吉備監督のプロ3名がおり、普段から一緒に練習している。
プロの中にスクールで一般プレーヤーを指導しているコーチたちが加わり、一つのチームとなっている。決勝トーナメントのダブルスに出場した坂井勇仁はコーチの1人だ。
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会場に応援に来てくれた人たちは「みんな知っている人たちばかり。ホームのようでありがたいです」と、応援の力がパワーになったと坂井は言う。教えてくれているコーチが出場しているのだから、応援する生徒も楽しいに違いない。
普段からチームとして活動しているため結束が高く、スクール生を巻き込むことで応援席にも一体感がある。こういうチームの存在が、日本テニス界を盛り上げる一助となってくれるだろう。
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<男子決勝戦スコア>
エキスパートパワーシズオカ 2-0 ノアインドアステージ
S1 吳 東霖 6-3, 3-6, 12-10 松田龍樹
S2 望月勇希 6-3, 3-6, 10-8 富田悠太
D 今井慎太郎/末岡大和 6-2打切り 市川泰誠/坂井勇仁
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<男子決勝トーナメント結果>
優勝/エキスパートパワーシズオカ
準優勝/ノアインドアステージ
3位/伊予銀行
4位/橋本総業ホールディングス
5位/イカイ
5位/三菱電機
7位/レック興発
7位/山喜
取材・文/赤松恵珠子 写真/伊藤功巳