ロンドン郊外で開催中のウィンブルドン選手権で、7月4日に男子準々決勝4試合が行われ、第4シードのアンディ・マリーが第7シードのダビド・フェレールを6-7(7)、7-6(6)、6-4、7-6(4)で破り、4年連続となる準決勝進出を果たした。また第5シードのジョーウィルフリード・ツォンガは、第27シードのフィリップ・コールシュライバーを7-6(5)、4-6、7-6(3)、6-2で退け、2年連続で準決勝に駒を進めた。
地元の期待はときにプレッシャーとしてのしかかり、ときに危機を乗り越える力を与える。この日のマリーにとって、センターコートを埋め尽くした観客の大声援は、間違いなく大きな支えであり、勇気と活力の源となったはずだ。
試合時間3時間52分。4つのセットのうち3つがタイブレークにもつれ込む、精神的にも肉体的に多くを求められる大熱戦。しかもマリーは第1セットを失うと、第2セットでもさきにブレークを許すなど、つねに相手を追う苦しい戦いを強いられた。だがそのたびに、1万5千人の観客たちが、地元の英雄にエネルギーを注入する。しかもこの日はロイヤルボックスで、ケンブリッジ公夫妻も観戦していたのだ。無様な姿は見せられなかった。
第2セットのタイブレークでは、フェレールに3ポイントの先行を許すものの、時速130マイル(208キロ)を超えるサーブを軸になんとか食らいついていく。フェレールがセットポイントも握った際にも、サーブで崩しフォアを叩きこんで危機を脱した。そしてこのポイントを機に、マリーは3ポイント連取に成功。剣ヶ峰で踏ん張り、逆転で第2セットを奪い返した。
この第2セットがターニングポイントになったことは、フェレールが試合後に「もし2セット先行できていれば……」と悔いたことでも明らかだ。第3セットは、ゲームカウント4-4からブレークしたマリーが6-4で奪取。再びタイブレークになだれ込んだ第4セットでも、やはりサーブの力がマリーを精神的に優位に立たせていた。5-4からフォアでウィナーを奪ったとき、マリーが「これで勝った」と思えたのは、次に控える自分のサーブで試合を決められる自信があったからだろう。現に最後はセンターにエースを叩きこみ、苦しみながらも準決勝へと勝ち進んだ。
そのマリーと準決勝で対戦するのは、こちらも絶対的なサーブ力を背景に勝ち上がってきたツォンガ。この日はコールシュライバーとの“ビッグサーバー対決”となったが、エースの数で7本上回ったツォンガが、その差の分だけ勝利に近づけたといっていいだろう。
自身も、全仏で地元のプレッシャーにさらされることの多いツォンガだが、マリーに対して「僕はほかにもフランス人選手がいるからいいが、アンディはひとりだけだから大変だと思う」と同情する一面も。当のマリーは「新聞やテレビは見ず、信頼する人たちと過ごしていれば、プレッシャーを感じることはない」と断言する。「現時点で考えていることは、次の試合に勝ち、初のウィンブルドン決勝に進むことだけ」と、気持ちは大願成就のみに向けられているようだ。
※写真はダビド・フェレールを下して4年連続で準決勝に進出したアンディ・マリー(上段)と、大願の決勝進出に向けひとつ駒を進めたツォンガ(下段)