国枝慎吾
パリで開催中の全仏オープンは7日に男子車椅子部門の決勝を行い、第1シードの国枝慎吾が第2シードのステファン・ウデと対戦。5-7、7-5、6-7(5)で敗れ、3年ぶりの全仏タイトル獲得は成らなかった。
 
過酷で、長く、ハイレベルで、そして悔しい戦いだった。あらゆるタイトルを総なめにし、全仏でも過去4勝を誇る最強の男が、2年続けて決勝で同じ相手に敗れたのだ。それも今回は、ファイナルセットのタイブレークにまでもつれこむ2時間57分の大接戦。炎天下の中、二人のアスリートが最後まで勝利を求め戦った結果、両者が獲得した総ポイント数は124対129。その差は、僅か5ポイントだった。

「車椅子テニスでは、サービスが有利ということはあまりない」

その国枝の言葉を象徴するかのような内容だった。ウデのサービスで始まった試合、国枝は相手のダブルフォルトにも乗じてリターンで攻め、いきなりブレークを奪う好調な立ち上がり。だが連覇を狙う地元のウデは、やはりこのクレーの戦い方を心得ている。筋肉が盛り上がった大きく強靭な上半身からサーブやフォアを打ち込むと、そのあまりの衝撃に車椅子の車輪が浮かび上がった。

豪腕から放たれる重いスピンは、食い込むように赤土を捉え高く弾む。ハイボールの処理に苦しむ国枝は第4ゲームでブレークバックを許すと、競り合いの中から、最後は相手に突き放された。

第2セットに入ると、国枝の戦い方に変化が見られた。国枝の武器はコートを縦横に駆ける俊敏なチェアワークにあるが、普段以上にベースラインに下がり、多くのボールを返し出すようになったのだ。いつもは1バウンドでボールをキャッチすることを好む国枝だが、この日は2バウンドも多用した。

そうして流れを引き寄せると、テニスの調子も上がってくる。第2セットも第1セットと同じくブレークの奪い合いになるが、このセットで最後に抜けだしたのは国枝の方だ。「好調のバロメータ」だと言うバックハンドのダウンザラインも多く決まり、タイトルの行方は最終セットに委ねられた。
  
第3セットでも、常に先行したのは国枝だ。5-4とリードしてサービスゲームを迎え、優勝まであと1ゲームにまで肉薄した。しかしここでも再び、ウデの豪腕が唸りブレークバックを許す。続くゲームでは15-40と2つのブレークポイントを手にするが、決めきることが出来なかった。

運命のタイブレークでは、地元の声援に奮起したウデが、豪打で国枝の技とスピードを打ち破った。

試合後――ウデが地元メディアやファンに囲まれる傍らで、肩を落とし視線を下に向ける国枝。だがコートを離れた時には、その表情に悔いは残っていなかった。

「第2、第3セットに関しては上出来だった。テニスは良かったが、決められるところで決めておかないとクレーでは勝てない」

勝敗を隔てた僅か数ポイントを悔やみながらも、「相手がよかったのでしかたない」と、力を出し切った満足感も見せる。

「自分と相手の最大の差は、ハイボールの処理。相手はチェアが高いので、高さで10cmほど差があった」と言う国枝は、自らも、チェアの高さを変更することを最近は考えているという。その背景にあるのは、スピンを多用するようになった、昨今の車椅子テニスの変化にある。

「ここ数年で車椅子テニスはレベルが上がったし、テニスも変わってきている」
もちろん、車椅子テニスを引き上げたのは、王者・国枝慎吾の存在だ。追い上げる勢力の気配を背に感じつつ、国枝は変化を恐れず上を目指す。

※写真は、準優勝のプレートを掲げる国枝慎吾
Photo by Hiroshi sato

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