6月14日付のITFシニア45歳以上の部で日本人初の世界1位となった佐藤政大と有本尚紀両プロだが、この成果を納めた過程には、毎年変わるランキング制度に翻弄させられることも多くあった。

ITFシニアは何大会出場してもポイントの高い4大会の合計でランキングが決まる。2018年まではRCという世界地域選手権がヨーロッパ、アメリカ、アジアオセアニアで1大会ずつあり、自分の住む地域で1大会の出場が可能だった。グレードAは世界各地で7〜10大会、グレード1〜4大会は各国で多く開催。世界選手権や地域選手権への出場はランキング1位になるには必要で、そのために2人はグレードA以上の大会出場に向けてポイントを稼いでいた。

2019年にはどの国で出場しても良いことになり、2020年にはまたさらに変化。世界選手権1600、グレード1000、700、400、200、100とカテゴライズされる。

しかしコロナの影響により大会が次々と開催中止となり、世界1位の夢は遠のいていった。そんな中、2021年5月にATP250が開催されるクロアチア・ウマグの同会場でグレード1000の開催が発表される。

日本で練習の日々を送っていた佐藤・有本は「コロナ禍の中でヨーロッパに行く事も正直迷いました」と言いつつも「とにかくできる限りの事をして出場を目指し、現状のランキングを維持しよう」と遠征を決意した。

シニアツアーは1大会でシングルス1カテゴリー、ダブルス2カテゴリーにエントリーができる。約1年2か月振りの海外での大会で、緊張や環境の違い、時差などもあり45歳以上はベスト8で敗退するも、40歳以上で見事に優勝。1000ポイントを獲得して世界ランキング1位の夢を叶えた。

クロアチア・ウマグの40歳以上ダブルスの優勝者として名前が刻まれた有本・佐藤。

 

”世界で1位”になるための道のりは、決して楽なものではなかった。まず目指した時にはまだ日本でITFのポイントを取得できる大会がなく、海外遠征が必須だった。対戦相手も身体が大きくパワーがあるので、そのための対策も必要となる。サーフェスはアンツーカーや芝など、日本で練習できないサーフェスで戦うことも多い。何より、佐藤・有本の住んでいる場所が宇都宮と名古屋と、2人で一緒に練習ができないという環境もある中、諦めずわずかなチャンスをものにして、日本人として初の偉業を成し遂げた。

有本は「プロとしては日本での最高ランキングが9位でしたし、世界でも700位前後でしたので、決して成功したとは言えませんでした。ITFの世界シニアでは、いったいどれぐらいまで行けるのか、どれぐらい今の自分が世界で通用するのかなどチャレンジしたくなりました。なのでシニアと言う枠ではありますが率直に世界1位と言うのは響きもいいですし日本人初でもありますしうれしいです。チャレンジ出来てこの世界にチャレンジして良かったなと思ってます」と喜ぶ。

今後の目標について佐藤は「9月にクロアチアで開催される世界選手権45歳以上男子ダブルス優勝です」と語る。

ベテランカテゴリーは全日本選手権が最高峰というイメージが強いが、2人は「シニアでも世界を目指せる」ことを多くの愛好家の方に知ってほしいという。プロの道を諦めビジネスの世界を歩んだ外国人選手や、同じ夢を持つシニアプレーヤーとの交流によって、2人の視野は大きく広がった。

挑戦することに年齢は関係ない。2人の挑戦はまだまだ続く。

毎年変化するランキングの仕組みに翻弄されつつも、日本人初の1位にたどり着いた。

ITFシニアツアーランキング

写真=佐藤政大 原稿=保坂明美