『第36回テニス日本リーグ』の決勝トーナーメントが東京体育館にて開催され、2月20日(日)は、男女決勝2試合、3・4位決定戦が行われた。
「チームの一体感」
優勝したイカイの選手たちは、皆、そう口にした。決勝の相手となった橋本総業ホールディングスは、準決勝で三菱電機に勝利した勢いもあり、S1に中川直樹、S2に伊藤竜馬を擁する。イカイのS1今井慎太郎、S2の徳田廉大で最低でも1勝する必要があった。
S2の徳田vs伊藤から始まった決勝は、徳田のこの日本リーグを通して得たものの集大成とも言える戦いだった。
1stステージで熊坂拓哉、正林知大に負けた徳田は「僕が負けて始まった日本リーグ、本当に情けない負け方で、流れを悪くした」と振り返る。この思いを胸に以降、練習を重ね、絶対に勝つという思いで臨んだ決勝トーナメントだった。
準々決勝でレックの正林、準決勝でマイシンの熊坂と再対戦し、リベンジを果たし勝ち上がってきた中、伊藤には2ndステージで勝っており、シチュエーションはそれまでとは異なる。しかし「とにかくレシーブのミスを少なくすること、こういう試合では必ず我慢しなければいけない時間帯がある」と考え、耐えるプレーを心に試合に臨んだ。
しかし、リビック以来の日本リーグ出場となる伊藤が「久しぶりにものすごく緊張した」と語ったように、1stサービスの確率が悪く、凌ぐスライスもネットを叩く。徳田は伊藤に復調する隙を与えず、6−1、6−2で勝利を先行した。
続くS2の今井は、中川に2ndステージで敗戦している。「日本リーグ以外でも対戦することがあり、負けることが多かった。僕のアグレッシブなプレーをさせないようにするうまさがある」と中川の持ち味を認識しつつの対戦だった。
試合は第1セット6−2で今井、第2セットはタイブレークで中川となり、勝負はファイナルセットのマッチタイブレークへ。
「こうなったらどっちに転がるかわからない。気合は出しつつ、冷静さは保つようにした」と、早稲田大学で団体戦を経験してきた今井は、まさにそのとおりのプレーを貫いた。序盤でミスが出て1−4となっても、我慢強く粘って相手にミスをさせる。ウイナーを決めたら声を出す。ダブルフォールトをしたら次のポイントは取る…といったシンプルな作業を積み重ね、10−8で勝利と共に、チームの優勝をもたらした。
土橋謙一監督は、「コロナで外国人選手が来られず、厳しい戦いになるかと思いましたが、日本選手だけでも優勝できる力があることを証明できた」と語る。
これまで”チーム”というよりも、能力の高い個々の集まりだったイカイが、1stステージの1敗から、自分のやるべきことを見直し、それに向かって共に成長した。
ルーキーとして1stステージに参戦した吉村大生は「出場する機会はあまりなかったですが、先輩たちが毎回で全力でプレーをする姿が見られ、しかも優勝することができ、本当に嬉しいし、感謝しています」と、チームの一員であることを喜ぶ。
また、ダブルスの小ノ澤新と柚木武も役割を認識して戦った。
「外国人が来られなくなったことで、逆にオーダーを決めやすくなりました。S2に誰が入るのか、という選択肢ではなく、入るところが決まっていたので、覚悟を決めて、その試合に向かえた」(小ノ澤)
「チームの皆さん温かい人ばかりで、一丸となって戦えて楽しかった。ダブルスも試合を追うごとに、役割や動きなどが理解できるようになってきました」(柚木)
敗戦から学び、チームの一体感が生まれることで、「優勝」という結果に昇華した。イカイのメンバーは、再びツアーで高め合い、連覇に向かって突き進む。
■男子決勝■
橋本総業ホールディングス 0-2 イカイ
S1 ●中川直樹 3-6 7-6(7) 8−10 ○今井慎太郎
S2 ●伊藤竜馬1-6 2-6 ○徳田廉大
D 斉藤貴史・田沼諒太 打ち切り 小ノ澤新/柚木武
■3位決定戦■
三菱電機 2-0 マイシン
S1 ○清水悠太 6-4 6-3 ●川橋勇太
S2 ○高橋悠介 6-2 6-2 ●熊坂拓哉
D 仁木拓人/田中優之介 打ち切り 川上倫平・河内一真
【総合結果】
優勝 イカイ
準優勝 橋本総業ホールディングス
3位 三菱電機
4位 マイシン
5位 伊予銀行
5位 ノアインドアステージ
7位 レック興発
7位 エキスパートパワーシズオカ
最高殊勲選手 今井慎太郎
構成/Tennis.jp (保坂明美) 写真/伊藤功巳