実業団の団体戦「第38回テニス日本リーグ」の決勝トーナメントが、東京体育館で2月16日から18日にわたり行われた。男子決勝は3連覇がかかるイカイと、3年ぶりの決勝進出を決めた三菱電機との対戦となり、三菱電機が5年ぶり4度目の優勝を果たした。
同じクラブ出身の三菱電機・高橋悠介と、イカイ・徳田廉大のシングルス2の戦いは、スピーディーなストロークで先に展開を仕掛けた高橋が第1セットを6−1で奪取、第2セットはネットラッシュをかけた徳田が6ー1で取るという出入りの激しい戦いとなった。ファイナル10ポイントタイブレークでは、一進一退の攻防が続き、先にマッチポイントを握ったのは徳田だった。しかしそれを猛追した高橋がカウントで並ぶと、緊張感とともにポイントが交錯する展開に。
「あれだけの応援の中、負けるのは嫌だと思った。覚悟を決めて1本にファイトした」高橋が17-15で制し1勝目をもたらした。
三菱電機シングルス1の清水悠太は、5年前の優勝時にも試合を決めた立役者だった。「前回は所属したばかりで、まだそれほどームに馴染めていたわけではなかった」と当時を振り返るが、約6年、所属先への思いも、テニスのレベルも確実に高くなっていた。
イカイのタイソン・キアットコウスキは、前年MVPにも選ばれた実力者だ。特殊な東京体育館のサーフェスにも対応し、サービスから相手を崩す。
前日の橋本総業ホールディングス戦で、リー・ツとのロングマッチを戦った清水は「最初は疲れがあって動きが悪かった」と、ブレークを許すが、次第にエンジンがかかってくると第1セットを7−6(4)で獲得する。
第2セットでは「リターンが返ればなんとかなると思っていた」という清水が、ネットプレーを絡めたポイントで相手にプレッシャーをかけ、6ー4でチームの優勝を決めた。
決勝ではプロ選手がシングルス2本で決め優勝となったが、三菱電機の特徴は、ダブルスに社員が出場することだ。
「平日は仕事、週末になると関西に集まり、かなりハードな練習をした」と、キャプテンの田中優之介が語るように、ダブルスに特化した技術や戦術、連携においては、プロと真っ向勝負できる強さと自信を持つ。
「コート内での振り回し、ロブリターンや突き球など、プロ時代にはしたことがない練習をしている」昨年プロを退き、現在は社員としてチームに所属する仁木拓人も驚くほど。
予選リーグを1位突破できたのは、このダブルスの強さもあり、もたらされたとも言えるだろう。
「コロナ禍以降、声を出しての応援が可能になり、三菱電機の一番の強みでもある、応援と一緒になって戦うことができた。選手も最高のコンディションで入れたことが優勝につながった」と、監督の長谷川寛氏が語るように、プロ、社員選手、そして応援が三位一体となり、日本リーグの持ち味を存分に活かした堂々たる優勝だった。
<男子決勝戦スコア>
三菱電機 3-0 イカイ
S1/清水 悠太 7-6(4), 6-4 Thai Son Kwiatkowski
S2/高橋悠介 6-1, 1-6, 17-15 徳田廉大
D/福田健司・丹下将太 4-6 ret 今井慎太郎・柚木武
<男子決勝トーナメント結果>
優勝/三菱電機
準優勝/イカイ
3位/橋本総業ホールディングス
4位/マイシン
5位/エキスパートパワーシズオカ
5位/伊予銀行
7位/ノアインドアステージ
7位/レック興発
文/保坂明美 写真/伊藤功巳