2024年最初のグランドスラム大会 「全豪オープン」。 男子ジュニアのチャンピオンは日本の17歳、坂本怜(誉高校)に輝いた。1月27日(土)、女子決勝戦に先立ちセンターコートで行われた全豪オープンジュニア決勝でチェコのヤン・クムスタを3-6、7-6(2)、7-5の逆転で破り、2019年ウィンブルドン・ジュニアを制した望月慎太郎(木下グループ)以来、日本テニス史上二人目のグランドスラム大会ジュニアチャンピオンとなった。
ジュニアチャンピオンとなった坂本は全豪オープン後、2月2, 3日にエジプトで行われたデ杯「日本vsレバノン」のデ杯選手として初めて選ばれ、出場はなかったものの日本3-1の勝利に貢献した。
そしてその後、男子テニスツアーの下部大会、ITFフューチャーに参戦、2月12日からのM15エジプトではシングルスで8強、ダブルスではチェコの選手と組んで優勝した。(ドロー)この優勝は坂本にとってプロツアー初の優勝。(坂本怜全ツアー成績、シングルス、ダブルス)
錦織圭は「最近は一段とストロークの質が上がったなと感じる。
持ち前のしぶとさと共にフォアの攻撃力が自信と共に増したのかな」と坂本怜のテニスに目を見張る。
坂本怜 錦織圭との第一声は
「・・・すね毛 さわらせてください」
錦織圭のアドバイス生かし
攻撃テニスに変身
坂本怜は錦織圭、西岡良仁らと同様に、日本テニス協会元会長の盛田正明基金(MMTF)の支援を受け2022年2月から、米フロリダ州のIMGアカデミーにテニス留学している。
その数ヶ月前、テスト期間で初めてフロリダを訪れ、憧れの錦織圭と会い、練習をする機会があった。今では錦織は坂本を「れいちゃん」と呼ぶほど打ち解けた存在になっているが、その時の坂本の第一声はなんと「…すね毛 さわらせてください!!!!」だった。シャイな部分を押し隠したユニークな発言で錦織との距離を縮めていった、と当時MMTFコーチだった山中夏雄氏は懐かしそうに教えてくれた。
当時の坂本の身長は既に190cmを越え、パワーがあるが、どちらかというと粘るテニスをしていた。錦織圭と練習した時、錦織から
「身長もあるのだから、
もっと攻めて前に出てこられたら怖い。
対戦している方としては、嫌だと感じるよ」とアドバイスを受ける。そのアドバイスを聞いてからの坂本はチャンスがあると身体を活かした攻撃テニスを心がけるようになつていった。
坂本怜 全豪オープンジュニア
錦織圭のアドバイスいかし
攻撃テニスで打ち勝つ
【全豪オープンジュニア決勝】
◎坂本怜 3-6 7-6(2) 7-5 ●ヤン・クムスタ (試合データー)
第1セット、10本のサービス・エースを決められ落とす。
第2セットはタイブレークに。
ドロップ・ショットからネットにつき、ボレーと決め先に2-1とミニ・ブレークするが2-2と追いつかれる。
サービス・エース級を決めると5ポイント連続で、坂本がタイブレークを奪い返した。
ファイナル・セット
先にブレークしたが続くゲームを落とす。
5-5、クムスタが40-0とリードしていたが、坂本はフォアの回り込み強打など積極的なテニスでデュースに持ち込む。
5回目のデュース、なんとクムスタはダブルフォルト、相手サーブの40-0から6-5とブレーク。
錦織圭からのアドバイスも身に付け、身長をいかした攻撃と凄い根性、勝負魂で優勝を勝ちとった。
富田悠太と共に育って欲しい
チェリーテニスクラブ
千頭政己コーチ
「小さいころから大きな子供だった。
テニスの戦績では、決して抜きん出ていたわけではない。
テニスは同じこの『チェリーテニスクラブ』で練習している同期の富田の方が良いテニスをして目立っていた。
初の全国タイトルは、2021年、中3年の時、コロナ禍の時行われた『中学生テニス選手権』。(1回戦から決勝まで1セットマッチになり、身近なライバル富田に6-3で勝って優勝)。
その時も驚いたが全豪オープンジュニアの優勝も驚き。
まだまだこれから先が長いので富田や他の選手と共に日本のテニスを盛り上げて欲しい」
とオーナーそしてヘッドコーチを務める千頭政己氏は愛弟子達が共に刺激し合い頑張って欲しいと語る。
また小さいころから坂本と接している同じクラブで育った6歳上の千頭昇平プロ(テニスラウンジ)は「テニスもキャラもそして体力も恵まれているので、テニス界の大谷翔平になって欲しい」とエールを送る。
2019年11月豪州で行われる14歳以下ナショナル大会に出場する前にボブ・ブレット主催のキヤンプに参加。左より、富田悠太(ノアテニスアカデミー)、本田尚也(ナダルアカデミー留学中)、13才だった坂本怜、ボブ・ブレット、Maherコーチ 、帯同コーチは、櫻井準人JTA Jrコーチと宮崎県の小林真吾コーチ。
194cm、80kg
右利き、両手打ちバックハンド
2006年6月24日生れ
愛知県名古屋市出身
6歳からテニスを始める
小4から『チェリーテニスクラブ』で練習、トレーニング
2022年2月、15歳、『盛田正明テニスファンド』(MMTF)で『IMGアカデミー』にテニス留学
坂本怜ATPデーター
坂本怜ITFデーター
坂本怜ジュニア成績
貴重な日本でのチャレンジャーの経験
自信つける
昨年の秋。兵庫、横浜、そして四日市と3週連続でATPツアー下部大会のチャレンジャーに主催者推薦で出場。1大会目は予選1回戦で内山靖崇(積水化学工業)に1-6 2-6 で敗れる。「私との試合では簡単なミスをしていました。その後チャレンジャーで凄く良い経験を積んだのですね」と勝った内山は全豪ジュニア優勝は驚いたと言う。坂本、3大会目では世界111位の選手に勝利2回戦に進む。(チャレンジャーでの成績)
そこでの経験で刺激をもらい、自信もつき、自分の良さの「強烈サーブ」と「意外とシコい」テニス、錦織圭からのアドバイス「長身をいかした攻撃テニス」を身に付けていったようだ。
慶応チャレンジャーでの坂本怜のバランスの良いプレー写真は ここ鯉沼宣之のFacebookで‼
記事:塚越亘/塚越景子/S.Kobayashi/Y.Oyama 取材協力 岩本功/山中夏雄/千頭昇平/千頭政己/櫻井準人/二本松一