各年代のトップを決める「ユニクロ全日本ジュニアテニス選手権2024」が8月26日から9月6日にわたり、有明テニスの森公園テニスコートで行なわれている。8月31日には、12歳以下の男女シングルスとダブルスの決勝が実施された。

 男子決勝は、全国選抜ジュニア、全国小学生と2冠を達成していたオトリエ龍馬が、この全日本ジュニアでも6-4,6-3のストレート勝ちで、2009年の山﨑純平以来の12歳3冠を達成した。

 決勝は全国選抜ジュニアの決勝と同じく石部宝之助との対戦だった。得意とする「クロスに追い出すショット」を展開し、序盤から長いラリーを繰り広げる。サービスゲームでリードされる場面もあったが、粘り強さを見せたのは「相手の体力を消耗させる作戦」だったという。

 第2セットになると、その作戦が奏功し、一気に5-0と突き放すが、そこから「少し緊張し、攻めることが頭から離れてしまった」。5-3と差を縮められたことで我に返ると、再び鋭角なストロークで相手を振り、優勝を手中に収めた。

12歳とは思えないポーカーフェイスで試合を運ぶオトリエは「ネガティブな態度を見せると相手にチャンスと思われる。表情はなるべく出さないで、心の中で切り替えていくように心がけた」と、貫禄さえ漂う。12歳3冠も、「プレッシャーと考えると緊張していいプレーができないから気にしないようにした」成果だといえる。地に足の着いたテニスで、今後も全国制覇を目指す。

オトリエ龍馬
石部宝之助

 女子の決勝は、今年の全国選抜ジュニア決勝と同じ、第1シードの佐藤実莉と第2シードの奥山し渚の対戦となった。全国選抜の時は、佐藤が勝利している。奥山はその後の全国小学生でも準優勝で、今回は3度目の全国決勝の舞台となった。

 奥山は決勝戦で敗れた過去の2試合を振り返り「優勝のチャンスはあったけど、どちらもメンタルが不安定になり取れなかった」と反省し、ノートを付けるようにしたと言う。試合序盤、足が動いていなかった奥山は、色々な球種を使う佐藤に第1セットを奪取されるが、その時にノートが役に立った。

 自分の調子が悪い時の解決策や自分にかける言葉が書かれており、気持ちを立て直せたのだろう。相手のドロップショットにも徐々に対応でき、武器である伸びのあるストロークが決まり始めた。ファイナルセットは、攻める姿勢を維持しながら、リターンミスを抑えるように心掛けた奥山が流れをつかみ、3度目にしてとうとう全国制覇を果たした。

「準決勝で全小、決勝で選抜ジュニアのリベンジができました。3回目の決勝で優勝できて、うれしいことが2つあったから」と、優勝して涙をうかべた理由を明かす。全国小学生決勝の後に流した悔し涙が奥山を強くし、今回のうれし涙となった。

奥山し渚
佐藤実莉

■12歳以下決勝の結果■

〇男子シングルス

オトリエ龍馬(関東)[1] 6-4 6-3 石部宝之助(関東)[2]

〇女子シングルス

奥山し渚(東北)[2] 3-6 6-2 6-2 佐藤実莉(関東)[1]

〇男子ダブルス

安居院咲空/安居院虹斗(関西)[3] 6-2 6-2 山口大知/山本悠聖(関西)

〇女子ダブルス

佐藤実莉/蛭田すず(関東)[2] 6-4 6-4 宮坂向葵/矢野碧依(九州)

取材・文/保坂明美、赤松恵珠子