3月11日 アメリカ西海岸、インディアンウェルズで行われているBNP パリバ・オープン、グランドスラム大会に次ぐ格のビッグ大会で、予選を勝ち上がった世界109位、25歳のダニエル太郎(エイブル)が元世界王者、グランドスラム大会に12回優勝しているジョコビッチを破った。
「最高の気分。ジョコビッチは本調子じゃなかったが、勝ちきった自分を誇りに思う」とダニエル太郎。
第1セットは2-5、ジョコビッチにセットポイントを握られてからの逆転。
2時間半、7-6(3)、4-6、6-1の素晴らしい勝利だった。
出場予定だった錦織圭は体調不良により棄権した。
ダニエル太郎
ニョロニョロいなかった!
オープンング・ゲームをラブでジョコビッチがキープする。
対するダニエル太郎は簡単にはキープできない、3回のデュースに末にやっとキープした。1-1。
またラブでキープするジョコビッチ。1-2。
ダニエル太郎ここでラブでブレークされた。1-3だ。
2-5、ダニエル太郎のサーブ、30-40でセットポイントを握られてしまった。試合時間は30分を経過、あきらかにジョコビッチが優位に試合を進めていた。
しかしそこからの見事な逆転劇だった。
昨年のUSオープンではナダルと対戦、デ杯でも日本を背負い戦い抜いたそれらの経験が花開いた。
おめでとうダニエル太郎。
――今日は(悪い考え)ニョロニョロがでてくることは無かったんですか?
「たまにもちろん出てきましたけど、でも、出来るぞ!っていう信じ切れる考えの方が強かった。
絶対出来るじゃなくて、出来るかもっていうのがあって、もちろん相手の調子も良くなかったっていうのもあったので、それでうまく乗れたかなっていうのもあったかなと思います」
――(試合が進んでいくにつれて)このまま勝てるかもという、そういう思いは?
「確かにセカンドセットはけっこう僕の流れだったけどなかなかブレイク出来なくて、うわぁもう本当にもうちょっとで取れるのにと思いながらブレイクされてしまった。そういうのはよくあるし、誰でもたぶんあると思うけど、やっぱりジョコビッチみたいな選手に2セット目を取られると、普通だったらこれで3セット目でやられちゃうんだなっていう考え方になるかもなと思っていたけど、意外とそうじゃなくて、第3セットで良いスタートが切れて良かった」
――自分のことを信じていたから第2セットを落としても戻ってこれたという感じですか?
「予選を突破して本戦の1回戦で勝って、三試合勝てたことで自信が全く違うので、そのおかげでたぶん勝てるという自信があったんだと思います。
これがもし、本戦からダイレクトインしていて、1試合目で彼といきなり当たっていたら、彼が同じように試合をしてきても勝てるぞという自信は持てなかったと思います。
やっぱり予選突破して、本戦の1回戦も勝って、今日もいけるかなという気持ちが出てきた感じです」
――センターコートでジョコビッチと試合した感想は?
「こういう舞台でプレーできるだけでテニスをやってきて良かったな!というのもあるんですけど、でも、ただ単にこういう所にたどり着くためだけにテニスをやってきた訳じゃない。
チャレンジャーを回っている時も、日本とかアメリカで練習している時も、苦しいジムのトレーニングも全部パッケージでプロセスの一つなので。それをぜんぶ楽しめないとキャリアを積んでいくのはキツいから。
もちろん、今日はこのコートでやってすごいと思ったけど。でも毎日いつもやっていることを基本的に楽しんでいるのが一番大きいと思う。」
――太郎はもうずっとこのレベルにいる、すごいファイターだ、知っているとジョコビッチが言っていた。彼との交流は?
「いや、全く無かった。トップの選手はなかなか現れないんで。
「あ、いた!」ちょっと珍しいポケモンのモンスターみたいな感じでで(笑)。
ナダルとフェデラーはあります。
ナダルはフェレールと僕が知り合いなので、その関係で話したことがあったり。
フェデラーは1回話したことがあったんですけど、ジョコビッチは1回も無かったです」
――そんな風にジョコビッチが自分のことを知っていてくれたというのは意外な感じがしますか?
「意外な感じがするけど、意外とみんな他の選手は知っているんだなあと思って。
フェデラーも僕のことを知っててくれて、それは本当に嬉しかったです。なんかナダルとやった時の試合を覚えていてくれて。何ヶ月も前のことなのに向こうから話しかけてくれて。
今年のオーストラリアの時なんですけど、あれは本当に人生の思い出です。その時は本当に興奮しました」
――以前トップ選手はボールが重いわけではなく、バンバンバンバン続けて打ってくるという話をしていましたが、それは今日のジョコビッチからも感じましたか?
「今日の彼はミスが多かったですけど、でもやっぱりミスをしてもミスがずっと続くっていうことが無いんですよ。
例えば150位ぐらいの選手だといきなり立て続けにミスをして1ゲームもらってしまう事もあるんですけど、彼だったら多くても2つとかだったので。
マレーと彼のボールって、ものすごく遅く向かって来ているように見えるんですけど、でも構えていると意外とこう、来るような感じ。
全然ボールは重くないんですけど、これ打てるぞと思って打つと振り遅れちゃうっていうのが多かったです。
特にサーブも、ナチュラルカット使っている人はボールの音があんまり大きくないし、なんか、ボーン!て飛んで来ないんですね。だけどボールがすごく伸びるから。錦織選手もそうなんですけど」
――試合の前に錦織選手が体調不良で棄権した事はもう知っていましたか?
「知っていました。
先週のアカプルコの時から体調が良くなかったのは知っていたんですけど、こんなに長引いていてちょっとかわいそうですね。
けっこう咳とか止まっていなくて。残念でしたけど、棄権して正解だと思います」
――昨年末から大きくテニスを変えて、今年はスケジュール面でもチャレンジをしていますが、トライしている事がもう既に結果として出てきている感じですか?
「どうなんですかね。わからないです、それは(笑)。
今日みたいなこういう結果が出せるのが当たり前になりたいですけど、でもこの結果はまだ1週目なので、これからどういう感じになっていくのかわからないし、まだ時間がかかると思うんですけど、でもこうやって試合に勝ち始めたっていうのは本当に良いサインだと思います」
ダニエル太郎3回戦ではL・メイヤー(47位、30歳、アルゼンチン)と対戦する。
錦織が健康でメイヤーに勝っていたら、錦織圭vsダニエル太郎の対戦になったのだが。実現しなかった。
記事:塚越亘/KyokoOga/塚越景子 写真H.Sato/TennisJapan