25日、日本期待の錦織圭(22歳)とアンディ・マリー(24歳)の準々決勝は6-3 6-3 6-1のストレートでマリーが勝ち、残念ながら錦織のベスト4進出はならなかった。しかし、テニス界の頂点であるグランドスラムの、しかも準々決勝で日本男子が戦っているなどという光景は、10年前には夢の世界だった。それを思えば、まだまだこの先の伸びが期待できる22歳の錦織の存在は、負けたりといえどもこの先に希望の光となる。
序盤の錦織にはやや硬さが見られ、いきなりサービスゲームを破られて追いかける展開となったが、そこから一方的な展開に持ち込まれないあたりに今大会での成長の跡を感じさせた。
マリーは「彼は今大会で長時間試合を3つもやってきてるし、彼はロングラリーが必要なタイプなのが僕には有利になった」と話していたが、錦織からすれば決めに行ったボールでも、マリーには的確に予測されて返球につなげられ、2回、3回と余計にボールを打たされた感覚だったのではなかろうか。マリーはナダルやフェデラー、ジョコビッチを常に仮想敵にしてきた選手。その守備力を打ち破るのは、今の錦織ではやや不十分ということだったのだろう。
しかし、「自分のショットも通用していると感じた」と錦織は話している。実際、ウイナーの数では、マリーの36本に対して、錦織は30本と差は小さく、鮮やかなウイナーで観客をわかせた回数で言えば、錦織の方が多かったかもしれない。フィニッシュのショットの精度を「4強」に通用するレベルに引き上げられれば、次戦ではポイントでももっと肉薄した戦いを演じられるだろうし、ラリーで互角以上に持っていければ、サービスに対してもプレッシャーをかけられる。
「コートの上の彼はとても賢いプレーをするし、とてもクイックに動ける。それにいいボレーを持ってると思う。ここ最近で、全てにおいて向上したんじゃないかと思うよ」とマリーは錦織を評している。「この半年ほどで彼が何をしてきたのかはよく知らないけど、今までやってきたことが正しかったんだろうと思う。それに、彼のことをジムでよく見かける。前週のブリスベンでもそうだったし、ここでもそうだった。そういう積み重ねが正しいんだろうと思う」とマリーは続けた。
錦織は大会後のランキングで20位になることが予想される。「トップ20が今年の目標だったので、それを2月に達成できてしまうのはうれしい。次はトップ15が目標」と話している。さらに、「オフの間にはグランドスラムで優勝するためにトレーニングしてきたから、体力にはまだ余力を感じる。でももっと強いフィジカルを作って、よりフィットさせたい」と錦織は前を向いた。今季の日本のテニスファンの楽しみが広がりそうだ。
もうひとつの準決勝は、ノバク・ジョコビッチ(24歳、セルビア)対ダビド・フェレール(29歳、スペイン)。第1セットの途中でジョコビッチが左足を傷めたような素振りを見せ、実際にパフォーマンスも落ちたため心配されたが、粘り強いものの、決定力に欠くフェレールに対して、ジョコビッチは要所でバックのダウンザラインや、フォアの逆クロスでウイナーを取り、最後は逆にフェレールの足を止めた。また、ジョコビッチはサービスでは1st、2ndを問わず、7割前後のポイント率を叩き出している。「突然痛みだしたんだけど、試合が短く終わったので助かったよ。今日は終始いいプレーができていたし、サービスが良かった」とジョコビッチは振り返っている。
「ロングラリーが増えるだろうね」とジョコビッチはマリー戦に向けての展望を話している。「マリーの調子はいいみたいだし、彼も本当に勝ちたがっているだろうけど、僕はコートに出たらいつもと同じことを繰り返すだけ。去年と同じようにね」。ジョコビッチは昨季の快進撃の再現ができると自信を語っている。最強の4人がしのぎを削る。男子テニスの幸せな時代は、もう少し続きそうだ。
※写真提供:テニスジャパン、マリーに敗れた錦織圭、クリックで拡大