ジュニアたちは選手によって進路は様々だ。プロを目指す選手、アメリカの大学でスカラシップ(奨学金)を受けることを目指す選手、日本の推薦もしくは受験で大学を目指す選手もいる。それぞれで辿るべき道が異なる中、太田茂氏は「チームサテライト」にて各選手に寄り添ったサポートをしている。所属する2人の選手に話を聞いた。

前後編に分けて紹介する1回目は、プロを目指す男子ジュニアだ。

小林マーカスはブルガリア人の父と、日本人の母の間に生まれ、6歳でテニスを始めた。幼少期からテレビでテニスを見ていたマーカスは、錦織圭のプレーに憧れたという。12歳でフランスのアカデミーにテニス留学し、その後父親の仕事の関係でカタールへ渡る。そして14歳までスペインのファン・カルロス・フェレーロのアカデミーに所属した。

インターナショナルスクールの教師を務める母親とともに日本に来たのは2年前だ。「サテライトテニススクール さくら野火止」の前身から所属し、今に至る。

「スペインでは寮生活で、コートとジムが完備された場所でテニスをしていたので、日本に来たとき、全部違う場所にあるので戸惑った」

マーカスは当時の思いを語る。自宅から電車でアカデミーまで通い、テニスの練習を行う。トレーニングはジムではなく、オンコートで行うことがメインだ。

現在彼のテニスを見ている近藤大基コーチは「まずは、ルーズな生活習慣を正すことから始めました」と言う。練習時間に遅れないことからのスタートだ。

スペインでは同じ環境ではテニスができないことを説明し、アカデミーに来る際には何時の電車に乗るか報告する。基本的なことをやり続けた。チームサテライトに所属し、錦織圭の指導にあたった中尾公一トレーナーから、憧れの選手がどういう生活を送っていたかを聞くと、その指導にも説得力が増す。

「もちろんどんな選手にも必要ですが、プロを目指すなら、まずは試合以外のところをしっかりさせること」が、近藤コーチのミッションだ。

慶應大学庭球部出身の近藤大基コーチの元、練習の日々を送っている。

そして、その道のりとして「日本のJTA大会に出場させること」が、試合経験やランキングにおいて重要になるという。

これについてはアカデミーの校長を務める太田氏が語ってくれた。

「ITFのジュニアランキングを上げる方法もありますが、ジュニアからプロになった際、またゼロからのスタートになります。私は、それよりもJTA大会で大人たちと試合させる経験を積ませること、そしてJTAランキングを上げておけば、その後のITF大会にも出やすくなると思っています」

ITF大会は、エントリーの際にランキングがなければナショナルランキングが優先される。そのランキングを上げておけば、予選にも入りやすくなるのだ。

今年から始めた挑戦だが、もちろん簡単には勝ててはいない。

「やっぱり負けると悔しくて落ち込みました」

最初は、ラケットが振れなくなり敗退すると、落ち込んで「練習を休みたい」と近藤コーチに連絡したこともあったというが、毎日30分走る習慣をつけ、それができるようになってくると、メンタル的にも成長し「完璧じゃないけど、前よりは試合で怖くなくなってきた」と語る。

今後は並行してジュニアの試合にも出場し、来年は関東ジュニア、全日本でベスト8以上を目指す。

試合でラケットが振れなくなることはあるが、少しずつ自信がついてきたという。

「日本に来て良かったと思います。まだまだだけど、プロの考え方を教えてもらっています」

まだ拙い日本語ではあるが、充実した日々を送っていることは、表情からもうかがえる。

近藤コーチは「僕ができることは、打ち方や、戦略の指導によって、彼の能力を引き上げること」と話す。

まだまだ荒削りではあるが、高い身長から繰り出すサービスは、威力十分だ。フランスでもスペインでも教えてくれなかったことを日本で知ることができた。マーカスが目指すところは「世界1位」だ。

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