2月に行われた全国選抜予選・九州大会において、チームサテライト福岡の西村遙花が優勝を収め、5月に行われる全国大会の切符を手にした。強豪ひしめく福岡大会ではベスト8止まりだった西村が、急激に成長した理由はどこにあるのだろう?

西村にとって、小学校1年生から始めたテニスは、小4くらいまでは習い事の一つだった。小3のときに初めて試合に出場した際にも結果が出ず、「緊張するから、あまり試合は好きではなかった」という。

しかし、週3回に練習量を増やした後の九州4年生大会で優勝すると、さらに週5回へ増やす。チームサテライト代表の太田茂氏と出会ったのは、5年生の頃だった。

「フォームのことを具体的に言ってもらえて、自分がやらなきゃいけないことが明確になりました」と、信頼を寄せた。

そして、彼女が小6の9月に、ブレイヴジュニアテニスアカデミーの全国大会出場を目指すジュニア部門が『チームサテライト福岡』として太田氏に指導を委託。昨年6月には、日本大学時代、学生として太田氏に師事した瀧本月氏が、コーチングスタッフとして福岡校の所属となった。

「女子ジュニアは特にメンタルがプレーに出がちなのですが、西村は性格がそのままプレーに出ていて、試合で持っているものを2〜3割をくらいしか出せないことが多かった。プレースタイルも相手のボールをひたすら返すプレーでした」と、瀧本コーチは語る。

そのテニスを変えるべく取り組んだのは、相手の時間を奪う、展開の早いテニスだった。

「ただ返すだけのテニスでは、今後勝てなくなる。粘り強さを生かしつつ、今後は自分から攻めていけるように、タイミング早く展開し、相手の時間を奪うテニスにシフトさせてほしい」という太田氏の指示のもと、瀧本コーチは、西村とともに新境地開拓へとチャレンジした。

西村は「瀧本コーチは、一人ひとりのことを考えてくれて、後ろでずっと見ていてくれます。太田コーチに言われたフォームの細かいところを直してくれるので、できていないときにすぐに治せます」と信頼を寄せる。

また、同時に別のことにも取り組んだ。

「早く動くために、体重を4キロ減らしました。お菓子やアイスを辞めて、ご飯も練習の前に食べたり、毎日ストレッチをして大きな怪我が出ないようにしました」(西村)

テニスの新しいチャレンジ、食生活の見直し、そして怪我をしない身体作りという、プロが当たり前のようにしていることを13歳にして行うことは、別の自信にもつながったようだ。

しかし、いざ試合になると、緊張もある中、取り組んできた全てを最初から出せたわけではない。全国選抜ジュニアの県予選では、ベスト8にとどまった。

瀧本コーチは「ここではまだ目指すテニスが完成していたわけではありませんでした。でも勝つためにまた粘るだけのテニスに戻っては意味がないので、負けてもいいから、やってきたことを出し切ることが目標でした」と、一つの過程として捉えた。

そして、九州大会で見事優勝。これに関して西村は「緊張はしましたが、相手の対策を瀧本コーチと話し合ってしっかりできたのが良かったと思います。うれしかったし、ホッとしました」と、笑顔を見せる。

5月の全国大会を控え、瀧本コーチは、「コートで戦っているときは1人なので、自分でテニスの調子もプレーも管理できるようにしていかなければなりません。ジュニアは練習中、ただボールを打ってしまう時間も出てきてしまいます。ですから私は、『今何を考えていた?』『なぜそこに打ったの?』と、声をかけ、練習が意味のあるものにすること。そして、目指すテニスがまだ完成したわけではないので、日々の積み重ねを大切にしていきたいと思います」と語る。

西村も「これまで全日本ジュニアやRSKの全国大会など、出場の経験はありますが、そこであまりいい成績は出せていません。だから全国選抜では、少しでも多く勝ちたいし、自分の武器の、早いテンポでの攻撃や、左利きの良さを生かしてプレーができるように頑張りたい」と、意欲を見せた。

練習と生活の見直しを、結果を恐れず取り組んでいく彼女たちの道筋は、ジュニア指導における、一つのロールモデルともいえるだろう。

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